「ニコラス・ケイジがカッコよすぎますぅ~。」バンコック・デンジャラス 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
ニコラス・ケイジがカッコよすぎますぅ~。
今週は、作品がおおかったのですが、その中でもこれがベストでした。いつもなら大作映画の象徴のようにお気軽に登場するニコラス・ケイジが「ゴルゴ13」並に冷徹で寡黙なスナイパーとして登場します。
脚本を担当したリッチマンが言うには、「今までの殺し屋を扱った作品では、彼らが話しすぎる。」ということを変えてみたかった見たかったそうです。
その気迫、鋭い眼光、そして集中力は、まるで別人のようでした。やっぱり『レイン・フォール』で椎名桔平がどんなに頑張って体を鍛えて、役作りに取り組んでも、本作のニコラス・ケイジにはかなわないでしょう。
本作の魅力は、バンコックというアジアの街を舞台に選び、スナイパーが棲息するのに相応しい猥雑さが作品に緊張感を走らせました。全編に渡って、デンデジャラスな空気感に包まれていました。
さて、主人公のジョーは、裏家業から足を洗うことを意識して、最後にお気軽な仕事として選んだのが、バンコックでの4件の仕事でした。
そんな彼が、完全無欠のスナイパーとして、己に課していた4つのルールがありました。
・質問しない(依頼主と無用に接触しない)
・堅気とは接触しない
・証拠は残さない(助手も殺してしまう)
・引き際をわきまえる
しかし、バンコックでは、完全無欠のルールを自ら犯していきます。
薬局屋の店員であったフォンとの出会いが、ジョーの中に封印されていた何かを呼び覚まして行ったようなのです。
それは、孤独を意識すること。完全無欠のスナイパーにとって、孤独は空気のようなものであったはず。しかし、フォンが聾唖者であったことから、彼女の孤独な思いが、ジョーの心を揺りぶり、互いの孤独な境涯を意識せざるを得なくしたのでしょう。
フォンに惹かれていくなかで、ジョーは暗殺者のもう一つの顔見せます。それは似つかわしくない笑顔と人を愛する気持ちでした。冷徹なジョーが、フォンとデートしているとき浮かべる屈託ない笑顔が、案外彼の本当の顔であったのかもしれません。
孤独を意識したジョーは、助手のコンを掟どおり殺さず、弟子にしてしまいます。このときコンの目に、自分と同じ空気を感じたと彼は自分にいいわけします。しかし、ジョーの中に人間味が、蘇っていく中で、彼の計画は大きく狂っていくのでした。
ジョーにとってラストとなる仕事は、民衆から慕われる政治家の暗殺でした。銃のファンダー越しに見える民衆の喚起した表情を見るに付け、ジョーの引き金を引く手に迷いが生まれます。そしてあり得ない感情が胸をよぎり、こう心に問うのであった。ターゲットを殺すべきなのか?と。
暗殺を一瞬ためらったジョーに、護衛部隊から蜂の巣をつつくような凄まじい銃撃があびかせられます。逃亡するジョーの動きの素早いこと。さすがはプロです。
そして、彼を要無しと判断した依頼主と、引退の花道として、民衆を苦しめている悪玉の依頼主を殺すことにしたジョーの激しいバトルが始まります。
アジトを急襲され、絶体絶命のピンチを爆薬一発で吹き飛ばすシーンや、ジョー一人対圧倒的多数が対決するガンファイトシーンは圧巻でした。
そして、警察に囲まれつつも、依頼主追い詰めるなかで、なんで!と叫びたくなるくらい痛い結末を迎えます。
敵のアジトに向かう前に、ジョーの裏家業に気づかれてしまい、疎遠になってしまったフォンの元へジョーが立ち寄り、無言でナマステと彼女に合掌するシーンが、哀愁たっぷりで痺れました。
う~む、ニコラス・ケイジがカッコよすぎますぅ~。