「"Every path is the right path."」ミスター・ノーバディ Kawakami Tetsuyaさんの映画レビュー(感想・評価)
"Every path is the right path."
この作品は大好きで何度も観たくなる魅力と仕掛けが詰まってる。
科学的に不死が可能となった未来で人々の注目する中、世界最高齢の男が死を目前に自らの人生を語りだす。
しかしそれは3通りの人生12通りの期間を生き、3人の女性を想い、想われ、愛したという矛盾を孕んだ不可解なもの…
また「多次元宇宙の平行世界」「存在認識」などテーマに加え「バタフライエフェクト」「エントロピー」などの要素が絡んで複雑さは加速する。
老人の回想かそれとも少年の想像か.....逆説にしろ順説にしろ成立する素晴らしいストーリーテリングは"答え"が無いからこそ"味わえる"モノ。
それにしてもあのラストは素晴らしく美しい。
そんな複雑なストーリーが圧倒的な映像美で描かれ、タイプライターと同期した映像進行や逆再生などの編集面、文字の出し方ひとつにしても「アート」を感じさせる。
ここまで知的に「アート」と「エンタメ」を両立させた作品は稀だと思う。
オープニングに映される「"鳩の迷信行動"実験」に大きな意味があり、「もし選択しなければ全ての可能性は残るんだ」との少年の言葉が物語全体を支配しているのだと思う。
讃歌的に人の人生と喜怒哀楽を描けるドルマル監督は多分、色々な物事を俯瞰出来る人なんだ...
キェシロフスキ監督なんかもそうだけど、そういった作品を撮れる人には感心するし感銘を受ける。
今後もこのジャコ・ヴァン・ドルマル監督から目が離せそうにない…
『Mr.Nobody』が気に入った人は是非ジャコ監督デビュー作『Toto le héros』も観てほしい。
意識し乍ら観ると作中のあちらこちらに共通点があって『Mr.Nobody』が『Toto le héros』の壮大なリメイクでは…と思えてくる。
老人トマの「私の人生は何も無かった」という語りで始まるも、逆に「何があったか」を描いているトコロがこの作品の魅力で、『Mr.Nobody』にも繋がるメッセージなんだろう。
いかなる人生にも美しいトコロはある。そんなことを気づかせてくれる大切な作品です。
鳩の迷信行動のところの意味もしくわメッセージとはなんなのでしょう?良かったら教えて下さい^_^
自分もこの映画は、人生TOP5に入る映画なんですが、そこがイマイチわかってません(つД`)ノ