劇場公開日 2009年2月21日

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シリアの花嫁 : 映画評論・批評

2009年2月17日更新

2009年2月21日より岩波ホールほかにてロードショー

シリアスかつ特殊な状況が舞台だが普遍的な結婚のドラマでもある

どんなに幸せそうな笑顔を浮かべる花嫁にしても、さまざまな感慨を胸に結婚式に臨むことだろう。愛する男性と晴れて結ばれる喜び、それまで長らく自分を守ってくれた家族と別れ、新生活を営むことへの一抹の不安……。この映画で純白のウェディングドレスを身にまとうモナを取り巻く状況は、普通の花嫁のそれと比較してかなり深刻なものだった。彼女はゴラン高原に暮らす少数派イスラム教徒ドゥルーズ派の家に生まれ育った。1967年の第3次中東戦争でイスラエルに占領されて以降、シリアは今もゴラン高原が自国の領土であると主張し、イスラエルもすでに自国に併合したと譲らない。結果としてゴラン高原のドゥルーズ派の人々は、いずれの国にも属さない「無国籍者」の境遇にある。

いったんシリアの親戚の家に嫁ぐと、おそらくモナは二度と故郷に戻れない。だから花嫁をはじめ式のため久々に集った家族の面々からも、どこか喜びより悲しみが色濃く感じられる。ただしシリアスな状況を背景としながら、ここで描かれるのは、あくまでも僕らと同じ普通の人々の姿であり、その感情の揺れ動きである。特殊な状況を舞台とした映画ではあるが、本作は今この瞬間も世界中のどこかで繰り広げられる結婚——“境界”を越える勇敢な存在への注視——とそれに伴う喜びや悲しみを捉える普遍的なドラマなのだ。美しいウェディングドレス姿の花嫁が国家の戦略や威信に基づき引かれた国境線上に立ちつくす姿を目に焼きつけつつ、僕らは結婚式の一日を描く新たな傑作の誕生に立ち会う。

(北小路隆志)

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