チェ 39歳 別れの手紙 : 映画評論・批評
2009年1月20日更新
2009年1月31日より日劇3ほかにてロードショー
敗れていく戦いの中で、ゲバラという人間の本質が浮き彫りにされる
成功に向かって輝いていく第1部と違って、この第2部は敗れていく話だから見ていてとても辛い。辛いけれど、キューバで成功した革命がボリビアでは何故失敗したのかが実によく分かる。その意味でも1部と2部を続けて見た方がいいし、ゲバラという人間の資質もより鮮明に見えてくる。
非常に興味深いのは、ゲバラがキューバの時とまったく同じ行動を取っていること。ゲリラ兵を訓練し、農民に敬意を払って信頼を得、彼らを味方に引き入れようとする。だがキューバでは成功したことがボリビアではことごとく失敗する。共産党の支援も打ち切られ、キューバの二の舞は踏むまいとするボリビア政府とアメリカCIAの攻撃も激化する。「敵も現地の情勢も変化してるんだから、もっとリサーチしてから戦わなきゃダメだよ」と叫びたくなった。でもゲバラは信念を変えない。作戦変更も撤退もせず、少なくなった兵を抱え込んで最後まで戦い抜こうとする。そんな彼を見ていて思うのは、彼は戦略家ではなかったということ。戦闘に勝つために戦略を練るのではなく、国民1人1人が革命の意義に目覚めること、その上で戦いに参加することを願う真の革命家だったのだ。それはとりもなおさず、個々の人間を、人間の可能性を信じるということだ。
ゲバラは「愛のない革命家なんて考えられない」と書き残している。敗れていく辛い戦いの中で、そんな彼の本質を浮き彫りにしたソダーバーグの奮闘に敬意を表したい。
(森山京子)