劇場公開日 2010年3月27日

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「強奪犯に憐れみを。」アーマード 武装地帯 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5強奪犯に憐れみを。

2010年4月3日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

興奮

しかしまあムサ苦しい面々が集まったもんだ。S・スタローン監督の次回作『エクスペンダブルス』の前哨戦かしら(笑)。

本作の脚本は6000本の中から選ばれたとの事だが、密室型サスペンスとしての面白さもさることながら、主人公らの動機に社会的なテーマを上手く絡めた辺りが評価されたのかもしれない。

主人公はイラク帰還兵だ。
イラク戦争で国の為に命を懸け、勲章まで貰った男が、帰国した途端に家を差し押さえられるというふざけた現実。
奪う金は家を差し押さえまくって金儲けをしている銀行の金(M・ムーアの『キャピタリズム』を観といて良かった)。
誰だって思うだろう。
「奪って何が悪い?」と。
「誰が俺を責められる?」と。

導入部は見事。
また、一向に進まない犯罪計画(特にトラックの扉を外す作業)に苛立ちが募り、段々と仲間への不信感が増してゆく描写にもなかなか説得力がある。
中盤と終盤の、トラックを使ったアクションシーンも重量感たっぷりで迫力十分。
エンディングを不満に思う人もいるだろうけど、個人的には好きかな。現状は打破できず、先は暗いままだが、どこか清々しい。

しかし、M・ディロン、C・ショート、L・フィッシュバーンを除いた警備員達の個性が薄いのは非常に残念。
それぞれが何を背負って犯罪に荷担したかをもう少し描けば、その後の仲間同士の裏切り合いにも納得できたと思うのだが。
信仰に篤い警備員なんて、まだまだ面白くなりそうなキャラなのになぁ。ジャン・レノの役も別に彼が演じなくても良い役だし。
あと脚本の欠点でいえば『GPS付きの輸送車なら怪しい動きはすぐバレるのでは』という他のレビュアーさんの指摘を読んで「あ。」と汗をかいたが、ま、それは気付かなかったからいいや(笑)。

サスペンス要素もアクション要素も抜群ではないが決して悪くはなく、しっかり楽しめる。何よりこの映画の登場人物達にシンパシーを抱いてしまった。

途中から犯罪計画を防ごうとする主人公に対して「アンタがいなけりゃ丸く収まったのに」とイライラした僕はきっとダメ人間。
だが八方塞がりの男達に同情を抱いたのは僕だけじゃないと思いたい。
最後、『お前を大切に思っていたのに』と言いたげに主人公を睨み付けるM・ディロンの眼が、泣きたくなるほど哀しい。

<2010/3/28鑑賞>

浮遊きびなご