劇場公開日 2009年11月21日

「子ども向けでもファンタジーでもなかった」マイマイ新子と千年の魔法 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0子ども向けでもファンタジーでもなかった

2023年11月5日
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鑑賞方法:VOD

良い噂は聞いていたし「この世界の片隅に」がとても良い作品なので、片渕須直監督の本作も興味はあった。
しかし、子ども向けそうなこと、ファンタジー色が強そうなことなどでなかなか観ずにいた。

蓋を開けてみれば、思ったほどファンタジーではないどころか、全くファンタジーなどではなく、時代のこともあって「ALWAYS三丁目の夕日」の、地方版、子ども中心版といった感じだ。
そして、噂の通り良い映画だったと強く感じた。

多くの映画監督には独自のカラーというものがある。雰囲気であったり、多用する技法であったり、脚本も自ら出掛ける場合、内容にも特色がある。
アニメーションの場合でも主に「映画」を主戦場にしているならば映画監督だ。
片渕監督にもやはりカラーはある。

「この世界の片隅に」で、すずさんの描く絵が実際に見えるものと重なるシーンなどが実にアーティスティックだが、本作においても同じような表現をしている。
二つの場面、本作では作中の現在と千年前をシームレスに移行させることで、あたかも同一の場面かのように表現する。観ていて場面切り替えによる引っ掛かりがなくなるのはある種の爽快感がある。
そして、主人公が妄想する過去として、その場に千年前を登場させてしまうのも印象的。

ほとんど関わりのない千年前が「今」かのように、千年前のお姫様が今の誰かのように錯覚できるのは素晴らしい。
この「続いている」感覚は、本作のテーマとも合致する。誰かが覚えていれば、誰かが思いを馳せれば、その人はまだ存在している。

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つとみ