劇場公開日 2010年12月11日

「こういう意見が無かったから、未見の人はよかったら参考にしてください」ノルウェイの森 セヴンさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5こういう意見が無かったから、未見の人はよかったら参考にしてください

2011年8月23日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

知的

いろいろとレビューを読ませていただきましたが、僕と同じ意見を見つけることができなかったので残しておこうと思います。
ネタバレはしないので、見ようかどうか迷ってる方の参考になればよいと思います。

ちなみに僕は26歳男性でハルキストではありませんが、村上春樹さんの著書はおおかた読んでいます。その中で「ノルウェイの森」は特に好きで今までに3,4回読み返し、最後に読んだのは、たしか3年前でした。
そんな僕の この映画の感想は
たしかに気になる点はあるけど、とても素晴らしい映画 でした。

僕が感じたのは“批評に関する戦犯は配給会社”であるということです。
なぜなら これは単館映画的な作品であって 明らかに全国上映をするような映画ではないからです。前にこれと同じことを思ったのが「キルビル」という作品です。個性が強く、多くの人が許容できる作品を作らない監督の映画を、大衆娯楽として上映することが間違っているのです。

この作品もトラン・アン・ユンという、人を選ぶ監督が作った映画なので、この監督が作る作品がどういう映画か知らないで見ると、違和感を感じても仕方ないと思います。

個人的な見解ですが、この監督はウォン・カーウェイ監督と同様、記憶の断片を再生するような映画を撮る監督です。その為、編集点(映像を切り替えるタイミング)が他の監督の作品とは大きく異なります。また、状況を理解しやすくするための説明やカット(映像)を省く事が多くあります。全体的に直情的な印象を与え、抽象的(*1)になりやすいです。また客観を挿みにくくなります。

そして原作であるノルウェイの森ですが、どちらかといえば内向的な話です。例えば内向的な映画は「心が痛む」の用な状態を伝達する話なので、カメラが被写体を捉えていれば内容が伝わるというような確証がありません。だからアクション映画のようにアクションを追えば内容が伝わる映画とは様相が違うのです。なので、どうしても原作とは違う映画的な演出が求められるのです(*2)。

そして、その演出こそが この監督の場合 記憶の断片を再生するような映像なのです。
そういった理由から同じ原作付きでもハリーポッターのような大衆娯楽映画とは全く異なったものとなります。だからシネコンで他のハリウッド大作や、ドラマの映画化なんかと同等なものとして扱われていた為に見てしまった観客の評価が得られるわけがないのです。

この映画は、この作品の監督の過去の作品である「青いパパイヤの香り」or「夏至」と「アイカムウィズザレイン」を見て、これらが好きな人が見るべき映画だと思います。

それを、興行主の事情で「ベストセラーの映画化だから、有名な外国の映画監督が作っているから、皆さん見てください」というのは、見た人の不評を買ってもしかたないと思います。

そうならない為に、そこのところを理解していて、それでも見たいと思う人に向けての単館映画で上映すべき映画なのです。

ちなみに前述したとおり全体的に抽象的な内容になりますし(*3)、演出としても原作どおりにできない為、原作の再現率を求めて この映画を見ることはお勧めできません。

最後になりましたが そういうところも踏まえた上で、この映画は、とてもよくできていると感じました。もちろん上記の説明のとおり映画用の演出を通して、多くの点で原作とは別の解釈をするモノとなりましたが、十分に満足しています。
ちなみに気になる点は配役です。そこら辺は他の人のレビューで書かれてるのでそちらをご覧ください。

*1)印象的な記憶を共有させることで感じることを説明させる為
*2)文体・言語で説明できない為
*3)心情表現を画から派生する印象で説明する為、文面のようにかっちりとした理解ができるわけがない

セヴン