「誰がヒーローを監視するのか?」ウォッチメン といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
誰がヒーローを監視するのか?
ここ十年くらい、アメコミヒーロー映画の躍進は凄まじいですよね。主役級の大物俳優を多数起用してシリーズが何作も発表され、興行収入ランキングでは常にトップに躍り出る。「アメコミ映画」という一つのジャンルとして完全に確立されているように感じます。
そんなアメコミ映画の中でも、かなり異質な作品として度々名前を見掛ける本作。「アメコミ映画最高傑作」と本作を挙げる方もいらっしゃったりして、かなり期待値は高かったです。
結論から言えば、かなり楽しめました。キャラクターの個性も光っていましたし、ストーリーも面白かった。冒頭でいきなりヒーローである「コメディアン」が殺される展開から始まるのも、ワクワクして素晴らしかったと思います。
アメコミ映画に対して皮肉を込めて鼻で笑うようなメタ的映画である本作。アメコミ映画を始めとするヒーロー映画の「あるある」に対する皮肉っぽい要素が多く盛り込まれており、ちょっと笑っちゃいました。
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舞台は1985年。アメリカとソ連の緊張状態が続く中、アメリカ中がいつ起こってもおかしくない核戦争の脅威に怯えていた。かつては戦争の裏で暗躍し、人々を見守るヒーロー集団「ウォッチメン」のメンバーとして活躍していた”コメディアン”ことエドワード・ブレイクが何者かに殺害される。ヒーロー狩りが行われていると察知した「ウォッチメン」のメンバーたちは、自分たちの身を守り犯人を突き止めるため、各々の行動を取るのであった。
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本作は2009年の作品なんですが、ここ2年くらいで頻繁に名前を耳にする機会が増えました。アマゾンプライムで配信しているオリジナルドラマ「THE BOYS」と共通点が多く、YouTubeなどでのレビュアーさんがよく「THE BOYS」と本作を比較して論じていたりします。私自身も「THE BOYS」は大好きな作品で全話鑑賞済みですので、本作も好みに合っていましたね。
かつては陰からアメリカを支え、数々の戦争の立役者となっていたスーパーヒーロー集団の「ウォッチメン」が、国の政策によって解体されてしまう。超人的能力や正義が国家権力の下に運用されているのは、大企業に雇用されマネジメントされるヒーローを描いた「THE BOYS」に通じるところがあります。
「ウォッチメン」のメンバーたちも決して一枚岩ではなく、それぞれが自分たちの理想のためにバラバラで行動しているわけです。ウォッチメン解体前の行動、解体後の行動。それぞれのキャラクターの個性が垣間見えます。個人的には、ロールシャッハが一番好きですね。各キャラクターの個性があまりに濃すぎるので、友達とどのキャラが好きか話をするだけでも面白そうです。
また、この作品は他のヒーロー映画でよく見る「あるある」を皮肉ったような描写が多いところも特徴です。個人的に爆笑したのは、ヒーロー狩りの黒幕が判明した時にこれからの計画を説明するところですね。「その計画止めてやる」と意気込むヒーローたちに対して「止められる可能性があるのにベラベラ説明するわけないだろ。もう計画は35分前に完了した。」って返すシーンですね。爆笑しました。
ヒーロー同士のいざこざや、私利私欲のために自分の能力を行使するヴィラン的立ち位置のヒーローもおり、そういうところも最近流行っている作品に似ている部分もあるなと感じます。
原作は1986年発表の作品というのが驚きです。全く古臭さを感じないどころか、時代を先取りしたようなストーリーだったので、非常に新鮮な気持ちで鑑賞することができました。
「THE BOYS」好きな人にはオススメです。ヒーロー映画好きな人にもオススメです。とりあえず観てください。よろしくお願いします。