劇場公開日 2009年1月24日

  • 予告編を見る

「現代社会へ「心の病」を蔓延させるなと言う警告メッセージ」レボリューショナリー・ロード 燃え尽きるまで odeonboy72さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0現代社会へ「心の病」を蔓延させるなと言う警告メッセージ

2009年1月29日

悲しい

難しい

私もこの映画の主人公の女性と同じような人とつきあっていた事がある。エイプリルの言った「パリへ移住しに行きましょう。あなたは仕事をしなくてもいいの。私が働くから。」この言葉の中に”根拠”と言うものがあれば、旦那を承知させることができたのかもしれない。
しかも彼女がパリで生活した経験も無く、さらにそこへ行ったことも無いのだ。旦那が軍でパリに駐屯していたからと言うだけの理由で、
それを押そうとする。

私の昔につきあっていた彼女が、これに似ていた。自分の意見が通らないと一日中気分が悪く、文句だけが続いた。一人っ子でわがままに育てられていて他人の気持ちなど考えると言うワンクッションが無い。しまいにはうつ病を発生して「あんたなんか愛していない。」となった。エイプリルがフランクに言った「愛していない。」と言うのとそっくりだった。

他の場所のレビューで「なぜ今頃こんな映画なのか?」と分からない人たちが沢山いるようだったが、1955年を舞台に描いたこのうつ病の映画は、この頃にはカウンセラーも、病気に対する処方箋も無かったのだ。半世紀を経た現代でこの病気で苦しんでいる人たちは、膨大な数になっているはずだろう。しかし、この病が完治するには多くの時間と治療と安らぎが必要となってくる。しかし、本当に現代の社会の中に「安らぎ」があるのだろうか。そして、50年前のシチュエーションを描いているこの映画の中では、隣人たちもこの夫婦をよそ者扱いをし、不動産屋の夫婦もうわべだけの応対しかしない。ある1人の人物であるジョンと言う心の病気に襲われている人間だけが、真摯にこの夫婦へ「真実の言葉」を送っている。しかし、それはフランクのような正常な弱い人間には「彼の言葉の核心」が見えてこない。

現代のねじ曲がった社会の中で心の病が大勢の人々を病ませている、そして50年前のまだ人間らしい生活ができていた社会の中でさえ、
その病を治すことが困難だったのだと言う作り手側のメッセージ。
今、癒しと言う言葉が本気で語られる世の中に、これらの病気が蔓延しないように止められる術はあるのだろうか。深いメッセージがこめられている映画だと私は思う。単なる夫婦を描いた映画ではない。

odeonboy72