「生と死を考える時間をもらえる」メッセージ そして、愛が残る マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
生と死を考える時間をもらえる
生とは何か、死とは何かを問う作品だが、語りべの役がドクター・ケイだ。ジョン・マルコヴィッチの低く抑えた語り口は、観る者に生と死が持つ意味を考える時間を与える。
自分の死期を悟ったネイサンを演じるロマン・デュリスは、やり手の弁護士というインテリジェンスな部分を醸し出しつつ、死への恐怖に怯え、やがて残された時間を有意義なものにしようとする心の葛藤を繊細に表現している。
そのネイサンの別れた妻クレアは、映画の前半、あまり目立った存在ではないのだが、徐々にその存在感を出しものの見事に昇華する。その透き通るような美しさと聡明感を、「ハート・ロッカー」でちょっと見だけだったエヴァンジェリン・リリーという女優が好演。
ストーリーそのものはシンプルなだけに、この3人の好演がなければ人の内面を描く今作は成り立たない。
ネイサンとクレアの結びつきは、冒頭の当時10才と7才だったふたりに遡る。まるで輪廻転生のようだ。生と死は、出会いと別れでもある。人には犬や猫と違い死後の世界が存在するという考えは人間の驕りだが、死後の世界を想像できるのは人間の特権だ。この作品は、死を正面から捉え、考えることができるからこそ生まれた作品だ。
映像も綺麗だが、アレクサンドル・デスプラによる音楽が印象に残る。
ネイサンとクレアの間にはもうひとり娘がいる。父母の離婚が影を落とすが、母親譲りの聡明さを持ち理知的だ。彼女の描く絵は次世代に続く能力を予感させる。
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