「少し謎解きのスピードが速いのと、後半の途中で犯人がわかってしまうどころか、ラストではすばり犯人が誰かわかってしまう犯行に打って出る展開には、興ざめしました。」華麗なるアリバイ 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
少し謎解きのスピードが速いのと、後半の途中で犯人がわかってしまうどころか、ラストではすばり犯人が誰かわかってしまう犯行に打って出る展開には、興ざめしました。
愛は極上のミステリーとよく比喩されます。そんな喩えを地でいくような作品が、本作のメインテーマ。
ミステリー要素よりも、登場人物よる優雅な世界を覗き見できる楽しみにポイントを置いていると思います。そのため犯行動機の感情や犯罪行為は、やや伏せられ気味になってしまいました。
謎解きを追うよりも、ストレスの多い現代人の日常や、事件に絡む男と女の葛藤しあう姿を追い、次第に速度を早めて、真相に迫っていきます。
少し謎解きのスピードが速いのと、後半の途中で犯人がわかってしまうどころか、ラストではすばり犯人が誰かわかってしまう犯行に打って出る展開には、興ざめしました。
また、主役のポワロを欠いた進行は、どうしても謎解きを進めるストーリーテラーを欠いてしまい、事実関係が淡々と進んでいくつまらないものとなってしまいました。余程の演出と構成を考えないと、ミステリー作品の場合、謎解き役の不在は致命的になってしまいがちだなと本作で感じました。
1946年に発表されたアガサ・クリスティーの名作『ホロー荘の殺人』の映画化したものですが、原作に登場するポワロは、舞台版に習って登場せず、登場人物のひとりして頭痛持ちの警部が登場のみの構成となっています。
やはり最後に、関係者を集めて、犯人はあなただといういつもの決めシーンがないのは、少しもの足りません。
けれども、ロケに使われたパリ8区に実在する高級ホテル、ソヨルジュ・サンクのお洒落な雰囲気、イギリス人とフランス人の食事や服装・習慣の違い、微妙な心の動きの温度差を、枠組みと状況を巧みに入れ替えて手堅く描く様は、単館系の映画ファンの心を満たしてくれる要素になることでしょう。
ある村の大きな屋敷にパーティーを楽しむため、上流階級の人たち総勢10人が集まり、理想的な休日を過ごすはずでした。
銃器コレクションが趣味の上院議員夫人の家に終末休暇に集まったのは学生の姪、精神科医と妻。売れない青年作家と彼に惚れている売り子、その青年が恋する女性彫刻家。そしてはるばるローマからは、著名女優が運転手同伴で登場してきました。
その総勢10人の滞在することになったメンバーのうち、女性たちの多くは、精神科医ピエールと関係を持っていたのでした。それを知るほかの男たちも内心嫉妬と憎しみの心をピエールに抱いていました。
宴も進む中で、そんな人間関係のごたごたが、いつしか底辺でくすぶり始めしたあげくの果てに、ピエール(ランベール・ウィルソン)がプールサイドで撃ち殺され、傍らにふたりの女性がうずくまっていた。
10人の滞在者全員が容疑者だというストーリーは、ミステリーの常道です。その動機として浮上するのが、殺されたピエールを巡る、もつれる愛と憎悪の連鎖だったのです。
しかし、殺人が起こるまでのプロローグが長すぎます。延々と登場人物の紹介と、その人間関係の説明が続いたのには閉口しました。
ラストで人間関係の綾がほどけるまで、人生の縮図を見せられているかのような愛憎劇です。その中で感じたことといえば、本心をチラとも見せない女は怖いといことです。但し、その犯罪の影にいる男と女の本性を最も厳しく見てい怖い女はアガサ・クリスティーなんでしょうね。
ちょっと「華麗なる」というタイトルが、ミスマッチのような気がします。