ハート・ロッカーのレビュー・感想・評価
全109件中、81~100件目を表示
とても正気ではいられない・・・
胃にズシリと重いものが残った。食べたものが消化できない感じだ。ただ、イラク戦争の爆弾処理班の日常を描いているにすぎない、ドキュメンタリー・タッチの作品ながら、打ちのめされてしまったのはなぜだろう? あまりにも死と隣り合わせで、緊張を強いられる任務だからなのか? それとも、そんな毎日をゲームのように楽しんでいるかのようなジェイムズのせいなのか? 自分でもよくわからなかった。
しんどい。。。
映画というより、ドキュメンタリーぽい。 ハートロッカーとは、「棺桶」と呼ばれる、爆発物処理班のこととは、後から知った。 戦争とは、こんなにもしんどいものなのですね。 当事者でもないのに。 その場にいるわけでもないのに。 ただ、「こんなことがあったよ」という映像を見ただけなのに。 いつ爆発するかも知れないとの、不安で胸がいっぱいになり、とてもしんどい。 一つ終わっては、また一つ見つかる。 また一つ見つかる。 限りない。 何だか息苦しいなと思ったら、いつの間にか、息をひそめて見守っていた。 兵士達から、「隣に友人がいるからこそ戦える」なんて言葉を耳にするけれど、その通り。 爆発物処理のプロとして、危険な場所にばかり赴くジェームス。 何も感じないのではない。 感じていては、できないのだ。 ただ、自分を必要としている人々のために動きたい。 それだけ。 愛する家族とも離れて。 アカデミー賞、9部門ノミネート、2010年3月、6部門受賞作品。 アカデミー賞らしいと言えば、「らしい」作品だと思った。
戦争というドラッグをふんだんに吸い込む
人を銃で撃って殺すということは、肉が裂けて内臓と血液が飛び出すことを言う。そこに嘘をついてはいけない。それをきちんと描いているから、この作品には大きな力が宿っている。 キャストは大いに地味。レイフ・ファインズやガイ・ピアースといったベテランは、出てはいるものの脇に徹している。主演ジェレミー・レナー演じるクレイジーな兵士には、戦争というドラッグをふんだんに吸い込んだ空気感が漂っている。歩き方から眼差し、話し方、息のつき方、それらひとつひとつで丁寧に命がけの傭兵を体現してる。 カメラもとても効果的なアングルとタイミングを押さえている。この映画は“爆破”自体かなりのキーポイントとなっているのだが、その破壊行為が戦場の麻薬として観客を惑わせるのだ。正義か悪かを問わない戦争映画だからこそ、見ているものは自分で何を見ているのか考えないといけない。そこにはただひたすら、弾丸、肉、スイッチ、血、ワイヤー、人間。それしかないのだから。
戦意高揚映画
グリーン・ゾーンとセットで見るとこの映画の性格がはっきりする。一見、「戦争」をリアルに描くことで悲惨さを訴えているようでいて、この戦争の本質など考えず、ガッバって戦え!という主張にしか見えない。イラク人の描き方が酷すぎる。
ヒリヒリと…神経焦げ付く緊張感。
ご多聞に漏れずの面白さでした。 いや…「面白い」と表現して良いものか…扱ってる内容が内容だけに、不謹慎な気もしますが。 ネタやトリック等を持ち得ないのに、サスペンス要素満載の緊迫感。 やたらとリアルなバグダッド市街地場景。 爆発する、爆発しない…テーブルに置かれた2枚のカード。どっちを引いてしまうのか…任務期間中に延々と繰り返される爆弾ゲーム。 爆弾処理班、主要キャラ三名の現場に於ける様々な反応と対応にも、緊迫感漲っています。まさに爆発寸前の精神状態。 彼らの誰にも納得できるし、誰にも納得できない。当事者じゃないから。 神経磨り減らし、まともな精神状態じゃ生きていけない状況。 前述した様な、爆弾ゲームを楽しむ主人公ジェームズの精神も、また或る意味で磨り減っている。 そして訪れるラスト。 不思議だったのは、ラストカットに訪れた、あの奇妙な恍惚感?高揚感?を自分が感じてることでした。 仰々しい音楽に乗せての、ジェームズの勇ましい後姿。 頭にこびり付いて、暫くは離れてくれないでしょう。
サハラとディア・ハンター
賛否両論の他の方のレビューで言い尽くされているようなので、 内容については触れない。 この映画を見終わって思い出したのは「ディア・ハンター」と、 昔ビッグコミックに連載されていた、小池一夫原作・平野仁作画の漫画 「女外人部隊サハラ」だった。 「ディア・ハンター」で、クリストファー・ウォーケンが演じたロシアンルーレットの 悲惨さは、戦争が人間の心にどれ程の苦痛を与え精神を歪めてしまうかを まざまざと見せつけてくれた。 「サハラ」の中に、地雷に処女を奪われた修道女が、地雷処理任務となり、 仲間の命を救うべく地雷を処理していく話があった。 彼女は恐るべき集中力と勘で、地雷を捜し出していく。 なぜなら地雷は彼女の愛しい恋人であり、いつ爆発するかわからない恋人と 彼女はまぐわうのだった。 「ハート・ロッカー」のジェームズ二等軍曹が、 ゲームを楽しむかのように爆発物を処理していく様と、 喜々として戦場に降り立つ表情に 「戦争=麻薬」の恐ろしさ・虚しさ・悲惨さを痛感した。
一般市民に驚く
爆弾処理のリアルな緊張感と恐怖、それと銃撃による殺人に対する感覚。凄い迫力でした。一番驚かされたのは兵士ではなく、イラクの一般市民です。あのような事態を平然と眺めている様子は、どれだけこの事態が日常的になっているのかと痛感しました。
考え込んでしまいました
何というか、レビューを書きづらい映画だと思います。 爆発物処理の話なのに、ほとんどドキドキしなかったし、 ストーリーも、主人公と周囲の人(軍人仲間や現地の人たち)との 間に何やかにやとあるにはあるのだけれど、取り立てて、という ほどではないように思いました。 だから評価が低いかというと、そんなことは全くなくて。 そういう内容なのに、あるいは、だからこそなのか 戦場が日常であるということについて、そして私たちはそれを彼らに 押しつけているんじゃないかと、すごーくすごーく考えてしまいました。 もちろんドキュメンタリーではないのだけれど おそらく同じような境遇にいるアメリカ兵の人たちがいて、 私たちはどれだけ彼らのことを思っているの? 米兵の存在によって生かされたり、傷つけられたりしながらも 受け入れるしかない現地の人たちのやりきれないような気持ちと、 またそれを感じているであろう米兵。それでも仕事をしなければならない 彼ら。 正常な精神状態でいられなくなるのも当然かなと。 「無事で帰ってきて」という、監督のアカデミー賞での言葉に納得しました。 気軽に見られる映画ではないけれど、私はほんとうに秀逸な映画だと 思います。
『ハートブルー』が好きならば、おすすめ
同監督の作品である『ハートブルー』が好きな人には、おすすめです。 要するに、アドレナリン中毒となった男たちの友情と、男のロマンの話です。 これが女性の監督というところが、また粋な作品ですね。
戦争中毒
また新たな戦争の定義が誕生した… 「戦争=ドラッグ」という。 『戦場のワルツ』を見ても感じた。明らかに“戦争”が変わってきている、と。あくまでも戦争は日常の一部であって、私達の描く戦争のイメージよりも、もっと軽いのだ。 この『ハート・ロッカー』は最初から最後までほぼ戦場が舞台であり、緊迫した雰囲気が一貫して流れている。しかし、それでもどこか、見ていてわくわくしてしまったり、痛快な感情を抱いたりしてしまうのは、やはり、この映画の「戦争は麻薬である」というテーマのせいなのかもしれない。 第二次世界大戦から、武器は驚くほど発達し、戦争技術は高まるばかりだ。そして、高まれば高まるほど、戦争は間接的でゲーム感覚になっているのではないだろうか。 女性監督が作ったとは思えないハードボイルドさで、終始圧倒されてしまった。 しかしながら、この作品の持つ軽さと見易さが戦争を肯定するようにも見えて、これがアカデミー賞受賞の理由かもしれない…とも考えてしまった。
これがアカデミー賞、作品賞・監督賞なのか・・・。
序盤から緊張感のある演出続きで、手に汗にぎりっぱなし。 危険物処理班のお仕事の大変さは十二分に伝わってきます。 またドキュメンタリータッチの演出も、途中何度も これはドキュメンタリーじゃないよな・・・、と確かめるほど 秀逸な出来栄え。 錯乱しているとしか思えない主人公や、周囲の人々の 歪みっぷり、病みっぷりも相まって戦争の怖さ、辛さは 強く心に残ります。 また、ストーリー性すら否定するかの内容に ひたすら現実の戦争を観客に突きつける監督の 強い信念も感じました。 ただ、ドキュメンタリータッチのブレまくりの映像も なれない人には気分を悪くするほどで、 序盤からの緊張感もあって、苦痛に感じる人もいるのでは ないでしょうか。 この観る者を引き込む辛い体験をお金を払ってまで するというのは、ある意味究極の娯楽ですね。 また戦争から程遠い日本人のどれだけが理解できるのかも 若干疑問です。 全体的にみると、かなり良くできていて、 すばらしい作品であるのは間違いないですが、 アカデミー賞をとるほどのものには思えませんでした。 何か足りない気がします。 観た人に、正直に真正面から現実を突きつけることに 終始しているからでしょうか。 その足りないものを女性が監督であることで 補っての受賞に思えてしかたありません。 うがった観方ですかね。
緊張感の伝わる2時間でした
序盤の爆破シーン以来、いつどこで爆発するのか、どこから銃弾が飛んでくるのか、どの人間が自爆テロリストか、本当に緊張感が最後迄伝わり、ドキドキさせられた、あっという間の2時間少々でした。 観る前のイメージは、派手な爆破シーン中心の映画かな?ドキュメンタリー風って書いてる人が多いから、アカデミー賞とは言えアメリカ人が好きな映画で日本人にはどうかな?って映画なのかな?と思っていましたが、終わる事の無い戦場のリアルな緊張感が最後迄ずっと伝わる映画でした。 考えさせられる事も沢山沢山入っていて、とても良い映画だと思います。 一度観ただけでは、私レベルではきっと感じ取れなかった物も、もっともっとあったんだろうなぁ。 でも、もう一度劇場で観るか?と聞かれると・・・・、ちょっと観ないかな。 ドキュメンタリーを思わせる為なんでしょうが、序盤の動きの安定しないカメラワークは、疲れ目の私にはちとキツカッタ(苦笑)
ドキュメンタリーを観てるような錯覚
爆弾処理の映画ということで、最初は映画ブローン・アウェイのような 感じで、いつ爆発するのかドキドキさせる感じが強いのかなと思ったんだけど そうでもなかった、多分リアル感が強く現実におこなわれてる戦争と 重なってホント ドキュメンタリーを観てるような錯覚になってしまうのが原因かなと思い 不思議なくらい じぃーっと観てしまった この映画を観て ひとつわかった事があった 戦争は人をヒーローにしてしまうのだと 戦うヒーローなのか守るヒーローなのか もしくはアンチヒーローなのか 様々だと思うが やはり戦争は恐ろしい
精神を削り取るだらだらとした恐怖
アカデミー賞授賞式の2日前に観たが、まあ観客の多かったこと! 作品賞ノミネートってのも宣伝効果バツグンだろうが、連日放送された爆弾炸裂シーンの迫力にアクション映画好きな野郎共の食指が動いたのは間違いない——かく言う自分もその一人(笑)。 だがアクション映画でよくある爆弾解体シーンの迫力を期待する人は、きっと肩透かしを喰らう。 いや、確かに緊張感はあるのだ。人間性の欠片も無い残忍な爆弾の数々には純粋に恐怖を感じるし、執拗なまでにディテールに拘った軍事行動の描写は、自分が戦地に放り込まれたような、ひりつくような緊張感を生んでいる(恐るべき精緻さで描かれる狙撃手対狙撃手のシーンは必見)。 だが緊張感の高さで言えば同じくアカデミー作品賞を受賞した『ノー・カントリー』ほどでは無いし、何より淡々とした語り口は時に単調とも思える。 しかし、だ。実はその単調さこそがこの映画の狙いでは無いか。 この映画にカタルシスは無い。 爆弾解体に成功しても、敵襲を切り抜けても、爽快感や高揚感は感じられず、残るのは疲労感のみ。 なぜならキリがないからだ。いくら爆弾を解体しようが敵を殺そうが、別の何かが常に命を狙っている。明日も、明後日も、そのまた次の日も。 爆弾解体の現場に走り込んできたタクシー運転手、兵士をビデオで撮り続ける男、“ベッカム”の家にいた老人。映画では、彼らの正体がはっきり語られない。 「こいつらは何者だ?」 「こいつらも殺すべきか?」 相手が何を考えているのか分からない。親しげに話し掛けてきた人間も信用できない。周囲360度の住民全てが常にこちらを狙っているのではという強迫観念。 “対テロ戦争”という大義名分が殆んど崩れ掛けたこの戦争で、それでも現地での任務にあたらなければならない兵士達に残されたのは、ただ『俺は今、殺されかけている』という状況の終わりなき連打だ。 この状況でマトモでいられる人間はきっと少ない。アドレナリン中毒となり、戦場以外で生の実感を得られなくなった主人公は、戦争により精神を歪められた人間のほんの一例に過ぎないのだろう。 精神を削り取る、終わりの見えない、だらだらと続く恐怖。 映画の淡々としたリズム自体が、幕の引き方の分からないこの戦争の鬱々とした空気そのものを表しているように思えた。 この泥仕合をそもそも始めたお偉いさん方は、映画の兵士達を観て何を考えるのだろう。 <2010/3/6鑑賞>
生々しい
映画館はほとんどが男性ばかりだった。テロの話なので女性よりも男性に好まれるようだ。 監督の思惑通り、有名な人を使っていないので、中間まで誰が主役かわからなかった。私が知っていたのはジェイムズの奥さん??がロストのケイト役の人だったってことぐらいだった。 ドキュメンタリータッチで描かれているため、バックミュージックとかもあまりないので、面白いのだが少し眠くなってしまった。 腹部に爆弾が埋められ死んでいた少年は結局誰だったのだろうか。 DVD販売の主人はなぜ、ベッカムについて語らなかったのだろうか。 疑問がたくさん出てきて、1回で納得するのは難しいと思う。
痛みの中毒性
冒頭「戦場は一種の麻薬のようなもの」 言いたい事はそれが全て。 戦争って、つくづくプラスになるものはないですね。 とにかく、じっと耐えつつ、張りつめた生々しい緊張感。 心も神経もピリピリとキリキリと実に疲れました(笑) 主人公だからきっと死なないだろうとは思いつつ、 周りにいる住民が見つめる中、いつ起爆スイッチを 押されてもおかしくない状況で ゴロゴロする爆弾を目の前に、手際良くパチパチとコードを 切っていく様、動きづらい防護服を思い切り脱ぎ捨てたり、 とにかく度胸が良すぎる行動にハラハラしっぱなしでした。 監督軍曹じゃなくても「返事はちゃんとせんかい!」と やんちゃな兵士を殴りたくなる気持ちに同化してました(笑) にしても、他の作品と何かちがう一線を画するリアル。 映像的にカッコつけたり美化したりする作品は多い中、 戦争自体も登場人物も否定も肯定もしない 絶妙なバランスの乾いた描写。 こういうとこ、女性監督ならではだなぁと感じました。 あと「勇者たちの戦場」という作品にあった 帰還兵が戦場でのトラウマから平和な母国での生活や 家族ともなじめず、また自分の居場所を求めるように 戦場に戻って行く兵士がいましたが、 そんな心情がこの作品のラストにも感じられました。 生きて帰りたかった母国も帰ってみると平和が虚しくて また戦場にでかけてしまう中毒性。やっぱ不毛です。
そして男は戦場に向かう…
爆発物処理班の日常をスリリングに描いており、戦争アクションとしても観れます。 しかし、この作品のテーマは違います。 「War is a Drug」 冒頭のテロップがこの映画の全てです。 地獄のような戦場が、いつの間にか自分の居場所となっていく。 戦争は麻薬…病み付きになるけれど、もう元には戻らない。 戦争が一人の人間の人生を、後戻りできないものにしてしまったのです。 これは、誰にでも当てはまることなのかもしれません。 そう思うと、戦争がなくならない理由がわかる気がします。 アカデミー賞も納得でした。
この世に「爆弾」は不要!
緊張感は期待したほどでも無く拍子抜けでも, 生産性皆無の戦争の現実を見せつけ, 安易な希望を挿まない骨太な作品だった。 ただ, 敵味方を含め,葛藤のドラマが少なすぎて,やや消化不良。 大胆さと,繊細さを併せ持つジェームズの恐怖, 悲しみ,心の傷の描写をもう少し掘り下げてほしかった。 とはいえ, 気持ちを伝えるのが不器用なのだと 理解できる彼の行動からは目が離せない。 それだけにラストシーンは嘆息。 いつか壊れやしないかと心配・・・。 戦場の空気感を伝える 乾いた銃器の音が恐ろしかった。
全109件中、81~100件目を表示