「女性監督が撮った“骨太戦争映画”」ハート・ロッカー mori2さんの映画レビュー(感想・評価)
女性監督が撮った“骨太戦争映画”
“本年度アカデミー賞最有力、最多9部門ノミネート!”現代の戦場を駆け回る“爆発物処理班”の姿を、女性監督キャスリン・ビグローが、リアルに描き出しています。
これまで、映画の題材としてあまり取り上げられたことがないと思われる“爆発物処理班”。そう、過去に娯楽戦争映画で脚光を浴びたと言えば「トップガン」や、「ネイビー・シールズ」などの、“チョット華やかでカッコイイ”っていうセクションが多かったと思います。然るに本作の主役“爆発物処理班”は、非常に地味です。決して華やかではございません。しかし、“自爆テロ”などが横行する現代の戦場で、彼等のスキルは欠かすことの出来ない重要なものになっています。爆発物処理班の兵士の死亡率は、他の部署の兵士よりも遥かに高いのですが、『爆発物処理班が存在しなければ、戦えない』と言うのが、現実なのです。そんな過酷な部隊の実情を、この映画はリアリズムを追求して撮り上げています。ですから、映像はもう殆んど『これ、ドキュメント?』って言っても過言ではない仕上がりで、現代の戦場の裏側を重く、且つ淡々と映し出しています。
こんな“男臭い映画”を監督したのは、キャスリン・ビグロー。そう、前述したように“女性監督”なんですよね。しかし、本作が女の人の撮った映画とは恐らく見終わった人は、俄かに信じ難いんじゃあないでしょうか?吾輩も正直、驚きました。『こんなの、どうやって女性に撮れるの?』って。決して差別的に思ってるのではなく、この映画は“男が撮る以上に骨太な戦争映画”に仕上がっていると思うからです。確かにキャスリン・ビグローの過去の作品(例えば「K-19」とか「ハートブルー」etc)も、相当に骨太であったと思いますが、本作の骨太さは、それらを遥かに凌駕しております。ホント、この監督は肝が据わってますね。もう『行くとこまで行ったれ!』って感じで。
主役の3名は、ほぼ無名(但しジェレミー・レナーは、今回の演技で、オスカーの主演男優賞にノミネートされました)ですが、僅かな出演シーンにも拘らず、監督とのコラボレーションに魅了されたハリウッド・スター達(ガイ・ピアース、レイフ・ファインズ、デヴィッド・モースといった面々)が、脇をガッチリ固めているのも見所の一つです。人徳あるんですね、キャスリン・ビグロー!
で、巷で話題になっております“元旦那”ジェームズ・キャメロンとの“痴話げんか”…もとい“アカデミー賞・頂上決戦(^^;”についてですが、あちらの映画=「アバター」は、“現実には決してあり得ない世界を、まるで現実であるかのように、スクリーン上(一部飛び出す)に再現した映画”だと思います。片や本作「ハート・ロッカー」は“一般人は殆んど知らない現実を、よりリアルな現実として、一般大衆の目にスクリーンを通して触れさせた映画”だと思います。確かにスケールや映像では、前者に軍配が上がると思いますが、現実を描いているという点で、ストーリーの重厚さや演出手腕としては、後者が有利だと思います。何より、この映画は生身の人間が演技をしておりますので、“作品の質”と言う点でも優れていると思います。勝手に主観を並べましたが、果たして結果はどうなりますことやら(これで、全然違う作品が受賞したら笑うな~)…?