「宇宙の果ての生存競争」パンドラム かみぃさんの映画レビュー(感想・評価)
宇宙の果ての生存競争
拙ブログより抜粋で。
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『WALL・E/ウォーリー』(2008年、監督:アンドリュー・スタントン)に出ていた巨大宇宙船の中で繰り広げられる『エイリアン』(1979年、監督:リドリー・スコット)といった趣の本作。最近の作品で言えば、宇宙船とお城と、舞台こそ違うが『いばらの王-King of Thorn-』(2010年、監督:片山一良)がかなり近い。
『いばらの王』でお城の中のコールドスリープカプセルはノアの方舟に例えられたが、こちら『パンドラム』の巨大宇宙船は文字通りの空飛ぶノアの方舟。
『いばらの王』同様、『パンドラム』でも冷凍睡眠から目覚めた船員たちに謎のモンスターが大挙して襲いかかるのだが、一応そのクリーチャーにも現実的な説明がなされ、最終的に映画のキャッチコピーとなっている「生存とは、罪なのか?」という問いが観客に投げ掛けられる。
そういう点では、『2001年宇宙の旅』(1968年、監督:スタンリー・キューブリック)も思い出させる。筆者は、『2001年宇宙の旅』でのコンピューターHAL9000の反乱は、人類とコンピューターとの“生存競争”と解釈しているのだが、『パンドラム』で殺戮を繰り返すモンスターの姿はまさに存亡を掛けた人間との生存競争。
そのことは対人間同士にも当てはまる。そこでは善悪のルールは通用せず、生き残った者こそが世界のルールとなり、未来を得ることができる。
かように、この映画が描かんとするテーマは、問題提起型のSFとして非常に興味深い内容なのだが、いかんせんその志で『エイリアン』的なモンスター・ホラーに比重を置いたのは失敗のように思う。
なにはともあれ基本的に「原子炉に向かう」ただそれだけの一本調子なストーリーにしては、展開上の工夫が足りない。
『エイリアン』を模したと思われる、“敵の姿がよくわからない”恐怖演出も、ただ見辛いだけであまり効果を上げていない。
そもそもモンスターの正体から考えるに、見せないよりもはっきり見せて、なぜそんな姿なのかというミステリー仕立てに振った方がよかったんじゃないかと思うのだが。
また時折登場する“別の生存者”についても、ほとんど説明要員としてしか機能していないのも気になった。ある人物に関してはオチがついて、そこは面白かったんだけどね。
一方ですべてを説明せずに、肝心の所は観客の想像にゆだねた演出はなかなかうまい。こういう余白は知的好奇心を刺激して、本格的なSF映画を観た気にさせてくれる。
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全文は『未完の映画評』にて。