劇場公開日 2009年8月22日

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「【”アジアの純真。そして人魚。”今作は日韓の希望なく生きる青年二人の、夫々の家族を想い、現状から抜け出ようとする奇妙な連帯を描いた作品である。】」ノーボーイズ,ノークライ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 【”アジアの純真。そして人魚。”今作は日韓の希望なく生きる青年二人の、夫々の家族を想い、現状から抜け出ようとする奇妙な連帯を描いた作品である。】

2025年10月27日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

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■韓国、釜山からボートに一人乗り込み、日本の闇組織のボス、ボニョン叔父さんに荷物を運ぶヒョング(ハ・ジョンウ)と、彼のボートを日本側で迎える仕事をする亨(妻夫木聡)。最初はキムチなどのボニョン叔父さんの好きな食材だと思っていたが、あることを機にその荷物が麻薬だと亨は気づく。
 そして、次の荷物として送られてきた父親がボニョン叔父さんから多額の金を盗んだ事で拉致された少女テスを利用して金を奪おうとし、ヒョングもそれを手伝うことになる。

◆感想<Caution!内容に触れています。>

・序盤は、ヒョングはボニョン叔父さんに媚びへつらい、亨も笑顔無く淡々として仕事をしている。
 そして、その理由が明らかになって行く。
 ヒョングは幼き時に、母は病弱な弟を連れて何処かに行ってしまい、それが心の傷になっており、亨も自分の素行により別れた妻(貫地谷しほり)に未練があるのである。

・更に亨の妹(徳永えり)は父親の違う3人の幼子を育てており、一番小さい子は病弱である。
 ヒョングと亨は逃げた少女テスから、失踪した父を探してくれたら、多額のお礼をすると言われ、ボニョン叔父さんを裏切り、少女テスを助けようと父を探すのである。

■今作のインパクト大のシーンは、矢張り亨が”アジアの純真”をカラオケ大会に飛び入りで歌う所に、ヒョングがそのステージに共に上がるシーンであろう。
 ”アジアの純真”を選択した演出が上手いし、二人が跳ねる様に屈託を晴らすように歌う姿が良いのである。
 更には、亨が”家族全員”を連れてバンで逃げる時に、同行したヒョングが”もし置いて行くとしたら誰にする?”とバックミラーに映る3人の幼子を見て亨に尋ねるシーンである。
 亨は“なに馬鹿なこと言ってんだ!!”と言いつつ、”真ん中の子だな。”と答え、ヒョングが”何故?”と聞くと、亨は”アイツは、一人で生きていけるから。”と答える顔を見て、ヒョングは、何故自分の母親が、病弱な弟ではなく自分を捨てたのかを悟るのである。
 そして、彼は車のサイドブレーキを引き、車を停めて自らが皆を助けるために、ボニョン叔父さんの所に行くのである。

<そして、ヒョングはボニョン叔父さんの手下により海に沈められるが、幻で同じくボニョン叔父さんに海に沈められた母親が人魚として彼の元にやって来るのを見るのだが、それは亨であり、彼は亨により海中から引き揚げられ、人口呼吸をされるのである。
 今作は日韓の希望なく生きる青年二人の奇妙な夫々の家族を想う奇妙な連帯を描いた作品なのである。>

NOBU
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