劇場公開日 2009年10月10日

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「無茶ブリだけど、イイ話。」引き出しの中のラブレター mori2さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0無茶ブリだけど、イイ話。

2009年10月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

伝えたいのに伝わらない“言葉”。伝えたかったのに、伝えられないままの“言葉”。そんな心の奥にしまったままの“言葉”を伝えていく本作。ツッコミたいところはイッパイあるのですが、まあイイお話です。

 え~とね、オムニバス形式の映画です。色々な人物が登場し、様々な物語が展開されます。キャストも常盤貴子、林 遣都、豊原功補、中島知子、岩尾 望、本上まなみ、片岡鶴太郎、伊東四朗、そして八千草薫に仲代達矢と多士済々。前半はそれら幾つかのエピソードが、ほぼブツ切りで展開していくので、何か見ていて“ピン”ときませんでした。『コレ、どこでどうしたいねんな?ようワカランな~。何でこんなにブチブチ切れるんや?』って感じで、正直乗り切れませんでした。しかし後半、作中で『「引き出しの中のラブレター」というラジオ番組を作る』というあたりから、少しずつ映画全体が繋がり始め、この映画の大きなテーマ“伝える”ということが、徐々にクローズアップされてきます。ここらへんからの演出は、なかなか上手いな~と思いました。個々のエピソードは、一言で言ってしまうと非常にベタで健全なお話ばかり。函館の高校生は、今時珍しいほどスレていなくて、家族思い。シングルマザーになることを決意した女は、何かと世話を焼く母を疎ましく思いつつも、ここぞという時にはやはり頼ってしまう。長崎から単身赴任で上京したタクシードライバーは、道が憶えられない上にナビも使えず、家族を思いながらも悪戦苦闘の日々。これら、まったく繋がりのなさそうな話が、ラストでは繋がっちゃうのです。相当無茶なフリをしてますが、かなり強引にまとめ上げられた気もしないではないですし、現に『このエピソードは、なくてもイイんちゃうのん?』と思ったものもありますが、意外や意外その話で一番泣かされちゃったりもしました(>_<)。うん、素朴にイイ話だったと思います。

 この映画では、ラジオの存在が非常に重要な位置を占めています。伝えられない想い、言葉を電波に乗せて届ける。ネット全盛のこの時代に、少々アナログではありますが、“言葉の力”を最もダイレクトに伝えることができるメディア…それがラジオだと吾輩は思います。そしてこの映画では、その“言葉の力”が、とても優しくスクリーンに映し出されています。『みんな誰かに想われて、そして誰かを想っている…』日々忙しく生きている我々が、つい忘れがちになる“想い”をこの映画は思い出させてくれます。

 主演の常盤貴子さんの演技もよかったですが、この映画で特筆すべきは仲代達矢と八千草薫の大御所お2人の存在でしょう。もお、出てくるだけで存在感が違います。ともすれば軽くなりがちな映画を、イイ意味で締めています。このお2人の共演(実際作中では絡んでおられませんが)を見るだけでも、この映画は一見の価値があると思います。

 で、どうしてもツッコミたいところがありまして…、函館の高校生が昼間に普通のラジオで、東京のFM(J-WAVE)を受信するのは不可能です!もし普通に受信出来たのなら、それは番組がネットされているのであって、彼らが聞いているのは北海道のFM局・FM NORTH WAVEの電波でしょう。常盤貴子演じる真生は作中『え?北海道でJ-WAVEが聞けるの?』てなことを、番組中で喋ってますが、自分の番組がどこまでネットされて流れてるかぐらい、把握しときなさい!せっかくJFLってものがあるんだから、その辺もっと上手く使わないと(^^;。

mori2