「アイタタタ…」真夏のオリオン hashikun54さんの映画レビュー(感想・評価)
アイタタタ…
潜水艦にハズレなし、というのだそうで、だから最低限の期待はしてましたが。ありましたねハズレ。
これ観るのキツかった。本っ当に。
ひげが伸びない乗員。高温の艦内で開けられて泡を吹かないサイダー。魚雷の下敷で圧死して傷ひとつなく血一滴出てもいない森君の遺体。魚雷をくらった直後に未だ健在な敵を目の前にしながら終戦の報せを聞いた途端無警戒に喜びはしゃぎ回る米兵。エピローグでからからに乾いてる地面。
リアリティが全っ然ない。
もっとも、最大の突っ込み所はストーリーなので、上のような個々のシーンの演技や小道具の突っ込み所はいくら並べてみても些末でしかないのですが。
福井晴敏の方は未読だけど池上司の原作はこんな酷い代物じゃない。
シナリオ担当者は相当自分に酔って書いたんだろうと思った。
もうね、ず~っと『イタい』んですよ話が。
いちいち感傷的で今そんなことやってる場合じゃねえだろって突っ込みたくなるシーンの連続。
進路を変更して伊81潜が消息を絶った地点に向かう主人公たち。
池上の原作だと沈んだ船から救助された人がキーパーソンになるから、救命筏か何かで漂流する伊81潜の乗員を救助して自分達の艦に乗せるのか?と思ったら全然そんなことはなくて、沈んだ伊81潜の艦長と感傷的な会話をするためだけにわざわざ出かけて行って、敵艦に捕捉されて、攻撃されて、それでも艦長は感傷に浸りっぱなしで退避の指示を出さないから別の人が代わりに指示しなきゃならない。
伊81潜にメッセージを送るのに鈴木君のハーモニカよりましな道具は絶対あるよ。その辺にいくらでも。
森君の遺体は艦長たちが要らん事したせいで偽装だとバレる。
というか、そもそもボタンが留まってるかどうか以前に楽譜の入ったメッセージボトルなんか抱えて浮いてきたらそりゃおかしいでしょうよ。
艦は既に沈んで森君は破孔から流出してきたと思わせる偽装をする場面で、わざわざ森君の衣服を整えてメッセージボトルまで抱かせるとか阿呆過ぎる。
艦の応急修理も終わって戦闘準備完了、乗員の肚も決まって、いよいよ浮上して最後の戦いに挑む。・・・と、ちょっとその前に鈴木君1曲吹いてくれない?
思いっ切り気勢削いでくれる。
イヤだろそんな奴。
そんなシーンばっかし。
最後、米艦から発光信号で送られたメッセージなんてあまりに恥ずかしくてとても正視に堪えませんでした。