「あー、いらいらする」ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
あー、いらいらする
総合70点 ( ストーリー:60点|キャスト:85点|演出:75点|ビジュアル:75点|音楽:70点 )
直接経験があるのでわかります。自堕落で自分のことが何よりも大好きで、だから自分が問題を引き起こして周りの人々を次々に巻き込んでいても、自分のことだけを憐れに思うどうしようもない幼稚で自分勝手で駄目男。こんなやつが側にいると迷惑極まりない。普通はそんなやつはすぐに周囲から干されるものだが、彼はいい男で才能があって女心をくすぐるだけに性質が悪い。
こんなくずはさっさとみんなで捨ててしまえばいいのにと思う。なんでいつまでもこいつの周りを離れないのかな。男を見ているだけでもいらいらするのに、ひどい行為にもめげずにそれでも彼を支え続ける女たちにまでだんだんといらいらしてくる。
それでも太宰治は女たちから愛されたのだから、私には理解しがたい魅力があったのだろう。それでも伝え聞く彼の行動だけでなく、少しだけ読んだ彼の作品からも自分愛に浸る甘ったるい姿が見えて、自分は好きではないです。
こんなやつを物語の中心に据えて見せられてもつまらない。これが太宰治が存在しない状態で作られた作品ならば、こんなことないよなと思って現実感がなくてさらにつまらなかっただろう。
でもそんなにいらいらするのに、この作品は合格です。なぜって登場人物たちの演技が良い。特に松たか子はいい。なぜこんな男に尽くすのかが理解出来ないのが難点だが、抑えた演技だけど魅力があった。文学的で退廃的な雰囲気を作り出す演出も素晴らしかった。だけどいらいらするからもう見たくない。
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