「人は信じたいと思うものしか信じない。 そして騙されていたとしてもそ...」ディア・ドクター 鯨さんの映画レビュー(感想・評価)
人は信じたいと思うものしか信じない。 そして騙されていたとしてもそ...
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人は信じたいと思うものしか信じない。
そして騙されていたとしてもそれを真実だと思えば真実になり得る。
医師免許を持たない先生は、村人にとってはたしかに先生で、このまま逃げなければずっと先生でいられた。
でも、ニセモノであっても悪者ではなかった。
癌で余命が僅かかもしれない患者に、1年後に会いに来るという娘。
もうそのときでは遅いかもしれない。
癌だと知っているのは自分だけで、きっと本人から娘に伝わることはないのに。
どうしたらいいか必死に考えただろう。
逃げるいい機会だと思ったのもあるだろうけれど、そのまま黙っていれば先生でい続けられたのに、そうしなかった。
先生がいなくなったあと、村人たちは手のひらを返して好き勝手に悪し様に言ったけど、
村にとっては先生が本物であるかどうかは大した問題ではなかったんだと思う。
拠り所があること、先生という存在が村にいることが大切なことだった。
俺はニセモノだと言う声が、きちんと届かずに消えていくとき、絶望的な気持ちになっただろうなあ。
こんなはずじゃなかったのに、と思っただろう。
自分でしてきたこととは言え、集団で神様を作り上げられて、外堀を埋められて、身動きが取れなくなって、先生をしてきた、それが一番の悪だというのなら、
村人も、違和感を持ちながらもそのままにしていた人間も、みんながみんな嘘つきで悪だ。
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