ベティの小さな秘密のレビュー・感想・評価
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小さな奥さんの小さな秘密
大人は子供には悩みなどないと思っている。子供が何かを「欲しい」と言えば、それは単なるワガママなのだと思う。だから、時間がたてばすぐに忘れるだろうとか、他の物(大人の都合のいい物)を与えておけば大丈夫だとか簡単に考えてしまう。しかし、子供には子供のちゃんとした考えがあって、誰にも相談せずに自分で解決したいのに、子供では無理なことがあるから、勇気を出して、機会を伺って、大人に相談しているのだ。それなのに大人は全然真剣に聞いてはくれない。子供のイライラはつのるばかりだ。大人が考える以上に子供って大変。自分の考えを解ってもらえない不安感と、力無い自分へのもどかしさ。そして、恐怖に打ち勝つ勇気と、好きなものたちを守ってやりたい自立心と思いやり。10歳のベティの小さな心は、大きく揺れている。
宮崎作品からインスパイアされたと語るアメリス監督だけあって、子供の心理を説明的にならずに明確に表現している。それが如実に現れているのが「色」の使い方だ。今回のテーマカラーは「赤」と「緑」。なるほどそのキー・カラーが随所に登場していて印象的かつ美しい。「赤」は情熱、「緑」は不安。見事にこの2色でベティという少女を表現しているではないか。緑の森の中を真っ赤なコート姿のベティが走り抜ける。その姿は、ひたむきで、一生懸命で、愛らしい。
精神病院から脱走してきたイヴォンを、自宅の庭の小屋にかくまった彼女は、10歳にしてまるで奥さんのようにかいがいしく世話をする。仲良しの姉が寄宿学校に入り、両親は離婚の危機・・・、その孤独と不安をイヴォンを世話することによって埋め合わせているかのようだ。そして彼女はどんどん成長していく。暗闇とお化けを怖がっていた子供は、責任感と思いやりと深い愛情を持った少女へと転身して行く。もう“ベティ”ではない、“エリザベス”というレディーなのだ。
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