MW ムウのレビュー・感想・評価
全48件中、41~48件目を表示
美しきモンスターになった動機
一番重要な、玉木宏が犯罪を重ねていく動機の描写が希薄だったように思います。
動機候補は以下。
1:MWに親族を殺害されたため、その責任者大臣・関係者に対する復讐
2:自身の『渇きがおさまらない』ため少しでもそれを紛らわすための犯罪
3:MWを各国に売却、金銭の獲得と人類に対する復讐
3 については、終盤、墜落しそうな輸送機のなか極限状態での、
山田孝之とのやり取りのため一番本音に近いはずですが、
なんだか風呂敷広げすぎ、荒唐無稽な印象で、にわかに信用できない。
1は、一番の責任者である大臣を殺すタイミングはいくらでもあったのに殺さなかったことで、
これも違う(エンディングでも殺しのデモンストレーションだけはしたけど殺さない)。
なので、自分の解釈としては2の『快楽殺人犯』に近いタイプ、がしっくりきます。
そういった点でみると、刑事の殺害の仕方が秀逸で、
助けようとした善意の人が最後の致命傷を与え死に追いやる。
結果、善意で行動した人間を立ち直れない精神状態にし、
被害者、加害者2人同時に殺害したような効果にさせる。
しかも、善意の人が神父であるところも救われなさを倍増させており、
快楽殺人犯の面目躍如というところ。
途中、玉木宏の目の色が赤く変わる場面(モンスター変身?)もあり
『偏執狂細マッチョ美青年』役にベストの配役でした。
また、殺害シーンの映像も派手で(許せるグロテスク)目を奪われました。(石田ゆり子素敵)
全体としては、突っ込みどころ満載ではありましたが(事前放送TV版は駄=C)、終わってみれば、上映中ストーリーに引き込まれ緊張がとぎれることなく、音楽も全編にわたり効果的で(音楽は最高評価A+)なかなか楽しめました。
美しいの意味が現れていない
原作のボリュームを厳選してここまでまとめて、ストーリー展開できたのは見事。事前情報のない観客にも理解できると思う。
ただ1点、美しきダークヒーローの結城役に「美しい」と形容詞をつけた意味が反映されていないため、悪役度合が狭まったように思う。MWに口を閉ざす男たちの娘や孫やただの女たちを、美しさを利用してガンガン誘惑しそしてあっさり殺していくところが描けていないと、「美しく」ある意味がない。賀来との同性愛のために美しかったわけではないはずだ。冒頭の一人殺したぐらい、美しくなくてもできる内容だと思う。
玉木宏の新境地。NON-STOP ACTION CINEMA.
自分は手塚治氏の原作を読んでいないので、何の先入観も持たずに観ることができた。
原作はおよそ30年前のもの。
だが、それを現代に置きかえても何ら違和感も覚えなかった。
むしろ“地下鉄サリン事件”や“9.11”を思わせるような(場面もあり)現代にも起こり得るの事なのではなかろうか?とさえ思われた。
原作では結城と賀来の同性愛だとか、新聞記者が男性であるとか諸々の違いはあるようだが、それはそれとして、非常に完成度の高い作品に仕上がっていると思う。
ただ、確かに、賀来神父役の山田孝之にはやはり年若いためか「神父」としての貫禄が見られず、ミスキャストだったのでは?とは思ったが・・・。
冒頭、Bangkokで起こる誘拐事件で玉木扮する結城美智雄、その真骨頂を見せ付けられた気がする。
役作りのためにウェイトコントロールをした様だが、そのシャープな身体つき、面立ちに正しく冷酷無比で頭の切れる結城がぴたりと嵌っていた。
対する石橋凌扮する沢木一之は、幾つもの修羅場を潜り抜けてきた叩き上げらしい、どこまでもしつこく「ホシ」を追い詰めてゆくベテラン敏腕刑事の姿を偉観なく発揮し、その存在感を知らしめており、この仰っけからのBangkokでの誘拐劇のシーンに惹きつけられた。
圧倒的に玉木だけに(心情としても映像としても)焦点を置き、その姿を追い、撮影し続け、その特出した異様な性格や行動を弥が上にも知らしめようとしているのが判る。
玉木はその期待通りに役を演じきった。
今公開中の「真夏のオリオン」や「ウォーターボーイズ」「ただ、君を愛している」やTVドラマ「篤姫」「鹿男あをによし」「のだめカンタービレ」(シネマ公開も近いが)でこれまで見てきた所謂『スマートな二枚目』『好青年』『真摯で真面目な青年』の殻をぶち破り、悪役・悪魔になりきっていた。
「どんなに人を殺しても、喉が渇くんだよ」というセリフは非常に結城を表す象徴的なもの。
撮影もさすがにL.Aで腕をふるい日本でも「世界の中心で、愛をさけぶ」などを手がけてきたカメラマンだけのことはある。
躍動感に満ち満ちており、生き生きとした迫力のある映像だった。
そして、音楽もまたストーリー展開とマッチしており、時には迫り来るその『事態』への静かな興奮を、時にはviolenceに、と終止一貫して「MW」なるものの異様さを湛えた構成になっていた。
ラスト、結城美智雄が米国軍基地で兵隊たちに取り囲まれるシーンも本物のTHAILANDの軍隊で銃も本物。
少しもぶれることなく銃を構える姿にrealityが無いわけがない。
岩本監督のこの作品への入れ込み様が窺い知れるというもの。
上映前に買ったアイスコーヒーの氷が溶けても、容器に水滴がびっしり付いても上映中にそれを手に取り口に運び飲むことが出来なかった。
一口も飲めなかった。
それほどまでにこの作品にのめり込み、引き込まれた。
エレガントな悪党
非常にワクワクして、楽しませて頂きました。
手塚治虫原作という肩書き先行抜きにしても、充分鑑賞に耐えうる作品でしたよ。
結城美智雄の仕掛けた二重三重の罠―
親友の暴走に苦悩する賀来裕太郎―
熱血漢、沢木刑事の必死の追跡―
三者三様、それぞれの視点から描かれていく物語構成は、誰に対しても感情移入することが可能で、真新しさは無いんだけど、良い構成だなと思いました。
…と、好意的な感想はここまでw
玉木宏の新境地という『冷徹な悪党』についてですが…
エレガントな悪党…エレガント過ぎた悪党って、印象ですかね。
えっとね…玉木宏自身には何の文句もないんですよ(『のだめカンタービレ』好きだしw)
ただ、何ていうか、やるんだったらもっと突き抜けてほしかったな。
狂気が足りないんですよね。
『レオン』のスタンスフィールド然り―
『ダークナイト』のジョーカー然り―
語り継がれる悪党には、狂気が絶対必要不可欠!!
だから『ケイゾク』の渡部篤朗ぐらいにイってほしかった!!
…て、この映画のトーンでそれをやっちゃうとマズイのか…
いや、それはそれで面白かったハズ!!
だから平均値を逸脱するには至らなかったかな…この映画は。
そこが残念でした。もちろん、面白いのは確かなんですけどねw
なりきった玉木宏の役者魂に拍手!
手塚治虫作品の中でもかなり特殊な部類に入る作品。
だから、当然原作どおりには出来ないと思っていたが、
原作の雰囲気を十分掴んでいたと思う。
それに貢献したのは玉木宏の役作りだ。完璧なまでに
引き締まった身体を作り上げ、凄みを醸し出していた。
ボクサーのような凄まじい減量で
良い人というイメージを完全に払拭し、
主人公、結城美智雄という悪の権化になりきるのに成功した。
ストーリーも巧み。
冒頭から身代金強奪のトリックで魅せてくれます。
幾重もの策を張り巡らし、その上更にもうひと押しして、
ジュラルミンのアタッシュケースを強奪しちゃうところは
感心どころか、感動ものでした。
そして今の風潮をあざ笑うかのように、お金さえ奪えば
事件の関心は薄れ、脅迫されていた人の事など忘れちゃうのを利用して
本当の目的を遂げる、あの非道さはゾクッときます。
それと、話が単調にならないように新聞記者の話も巧みに織り交ぜ、
事件の核心に迫っていきます。
山田孝之、石橋凌といった役者さんたちも
玉木宏の全力投球にかなり煽られてはいたものの
彼だけが浮いてしまわないだけの力量で
しっかりと受け止めていたと思います。
リアリティを求めると、もう少し何とかしてください
というシーンは各所に見受けられましたが、
だとしても、スケール感の有る素晴らしい作品だと思います。
悪魔が取り付いたか?!結城美智雄
30年前に書かれた作品ということで、ストーリー的にも、映像的にも、目新しいことはなし。
でも、この映画には玉木宏あり。
「好青年」「良い人」の玉木宏が、この役のために7kgも減量したことは、大成功だと思う。
細すぎる体。
思わず、ゾクッとする冷たい目。
ナイフのような鋭利さ。
冷徹な殺人鬼。
どれも、今までの彼とのギャップが良い。
善と悪。
光と闇。
神父と殺人鬼。
いろいろな謎を解き明かしながら、話はすすむ。
退屈はしない。
玉木宏演じる結城美智雄が、≪悪≫だとわかっていても、なぜか肩入れしたくなる。
きっと、絶対的な悪ではないから。
他に≪良い人面した本当の悪≫が存在するから。
最後は良い。
途中、911テロを思い出した。
風刺も入っているのかな?!と思ったのは、私だけかな。
あっさりとした実写化
あの「MW」を、いろいろな意味で、実写化できる
ものなのだろうかと思いましたが、さすがに結城と
賀来の関係は、原作通りとは行かなかったようで、
二人の生い立ち(特に結城の)を変更してしまった
せいもあって、原作のようなエキセントリックな変装や
猟奇シーンは影を潜め、PG-12指定ではあるものの、
随分とあっさりしたピカレスク・ロマン(古っ!)に
仕上がったという印象を受けました。
もっとも、Vシネマでもない限り、忠実な映画化は
無理でしょうし、少なくともこのキャストでは、誰の
所属事務所も許可するとは到底思えませんでしたが…(笑)
手塚治虫「原作」ではなく、「原案」の別作品として観れば
キャストも魅力的で楽しめる作品だと思います
全48件中、41~48件目を表示