劇場公開日 2012年12月14日

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「前シリーズに比べ大らかで明るい雰囲気がいい」ホビット 思いがけない冒険 マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0前シリーズに比べ大らかで明るい雰囲気がいい

2012年12月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

興奮

まず170分というのは長い。あと10分か15分切れなかったものだろうか。長尺好きのピーター・ジャクソンに切れというほうが無理か。つまらなくはないが、話の展開が「ロード・オブ・ザ・リング」の3篇とさして変わらない。旅するパーティーが、邪悪な者たちがうごめく山や谷、地下道を抜け、多勢に無勢の戦いを繰り返す。このシリーズが完結したとき、全6作を通しで観るには相当の気力を要しそうだ。

それでも13人のドワーフたちは楽しく、それぞれに魅力的だ。一度に13人が揃ってしまうので、名前と顔が覚えられないのが難だが、リーダーのトーリンは逞しい上に気高さがあり、仲間意識の強いボフール、弓の達人キーリ、ちょっと頼りないオーリ、そしてドワーフ王国の滅亡とトーリン元王子の勇敢さを目にしてきた老体バーリンという個性あるキャラクターが目につく。

音楽は「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズに引き続いてハワード・ショアが担当。壮大で耳に残るメロディアスな楽曲は相変わらずで、この作品でやっと音楽に映像が追いついた。
前シリーズに比べ、VFXによる描写が格段によくなり、ロケの映像との違和感がまったくなくなった。昼夜ともに合成の痕跡も見あたらない。
難をいえば、一面にすべてを収めたい構図上の問題かもしれないが、距離感が曖昧な場面が目につく。敵と十分離れているはずなのに妙に近く見えたり、またその逆に敵が目の前まで迫っていたはずなのに次のカットでは遠く感じる。これは前シリーズでも多く見られた。

ゴラムの表情は相変わらずいい。あの悔しさと怒りが入り混じった目がたまらない。瞳のウルウル感が高画質で一層リアルになった。

今回、HFR(ハイ・フレーム・レート)という上映方式で、その高画質を体験した。
通常の倍になる48コマの映像は、カメラがパンするぐらいでは画像がブレず、森を疾走するシーンでは木の葉の1枚1枚がくっきり見える。そしてなんといっても流れるようなスローモーションが美しい。静止映像のクォリティもかなり高く、きめが細かく色ののりがいい。
反面、何もかもがくっきり見えて、液晶ハイビジョンTVのようなギラギラ感があり、まるでメイキング・ビデオを見ているような感じになる。投影されている画面の外にスタッフや機材の存在を意識してしまうのだ。慣れも必要なのだろうが、すんなり映画に入り込めない拒絶感がある。
この辺は、次作でどの程度チューニングを施してくるのか楽しみのひとつだ。

マスター@だんだん