「ターセムと石岡の意匠が最もよく機能しあった傑作」落下の王国 ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
ターセムと石岡の意匠が最もよく機能しあった傑作
『ザ・セル』に比べて、本作はどこか優しく、「創造すること」の源泉に寄り添った一作だ。そこにはクリエイターとしてのターセムの内面が投影されているとみていい。「落ちる」という行為やベクトルには何が隠されているのか。本作はターセムの大きな失恋をきっかけに生まれたものと聞くが、それを映画黎明期におけるスタントマンのフィジカルな「落ちる」にまで広げていくイマジネーションに圧倒される。
物語内物語においてあれほど鮮烈な映像美を描き出そうとすれば、労力と手間暇だけでなく、もう一つの何か強烈で圧倒的な要素が必要となる。すなわち、この野心的な映像世界が成立するには石岡瑛子の衣装が不可欠だった。ターセム自身の力ではどうにもならない部分を、もう一つの「極」でもある石岡の意匠が引き立て、解き放ち、モノにしてくれたように思えてならない。その意味でも本作は二人のコンビネーションが最もよく機能した快作と言えるだろう。
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