「流行りの…」ダイアリー・オブ・ザ・デッド MASERATIさんの映画レビュー(感想・評価)
流行りの…
ゾンビの産みの親、ジョージ・A・ロメロ監督作品。これを聞いただけで「観たい」が「観ないといけない」という思いになる。ロメロ作品のゾンビは本当に王道だ。近年は全力疾走が当たり前のゾンビだが、本作を観るとこれぞゾンビの在り方だろうと考えさせられる。
しかし、ロメロも最近の流行りを取り入れた。それが主観撮影(POV)。本作は2007年度の作品ということで、今現在よりはまだ浸透していなかったと思うが、初めは正直がっかりしたものだ。ロメロには昔ながらのスタンスを突き進んで欲しかったからだ。しかし、観賞して考えが変わった。POVはロメロの説教タイムに必要な要素だったのだ。彼が本作で言いたいことは、紛れもないネット社会への警鐘。情報が素早く拡散すると共に、共感などを得たくて過激な行動に出る人物や、その情報に踊らせれる人々…確かに今現在の世界がそうではないか。ロメロは2007年の時点で、進歩を続けるネット社会に注目していたのだ。老いてもなお、飽くなき欲求と探求心とメッセージには感動させられる。
しかし、作品としてはどうも勢いを感じない。ストーリーがローテンポなのは前からなので気にしていないし、それがいい味なのだが、POVスタイルにそれは合わないのだろう。どんなに大音量で観賞しようと、部屋を真っ暗にしようと、そのせいでこれっぽっちも怖くない。
ここが致命的なんだと思う。やはりPOVというと、同じゾンビムービーならば「REC/レック」シリーズ。これくらいの迫力がないと観た気にならないということが本作で分かった。
しかしそれをやってしまうとロメロっぽくない。また、それにとらわれ過ぎると、どれも同じような怖がらせかたの作品になってしまう。いやはや、映画作りも大変なものだ。