劇場公開日 2011年2月25日

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「ハリーに付いていけなかった貴方へ」ナルニア国物語 第3章:アスラン王と魔法の島 ダックス奮闘{ふんとう}さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ハリーに付いていけなかった貴方へ

2011年3月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

興奮

「007」シリーズの監督も務めた経験をもつマイケル・アプテッド監督が挑む、世界で幅広い人気を獲得しているベストセラー小説の映画化第3弾。

「ハリーポッター」シリーズには付いていけなかったけど、「ナルニア」は観賞しているという方、意外と多い。かくいう私も、その一人。ストーリーについて論じていくのは他の皆様に任せるとして、別の視点から「ナルニア」が日本人、特に大人の方々に支持されるのか考えてみたい。

第一は、大人の鑑賞に堪えうるリアリティぎりぎりの物語にある。私自身「ハリー」は前半を観賞している。その中で感じたのは、章が進むにつれて顕著になる「子供」への執着である。第一弾ならその幼い容姿にぴったりで微笑ましい。だが第四弾あたりになって、顔が大人びたハリーや仲間が初回と同様に幼稚なじゃれ合いを必死にこなす。これがまた、大人の視点からすれば、恥ずかしさを覚えてしまう。

その点でナルニアは、新陳代謝活発な成長期を誠実に生きている。夢見る子供世代以外を徹底的に物語の軸から排除し、ファンタジーをより無理なく展開。それでいて殺戮のような子供世代に向かない描写への配慮も万全。あくまでも現実的に、夢のファンタジーをぶち壊す要因を理解して作られている。

第二に、現代の観客への配慮である。「ハリー」観賞に挫折した方の多くの要因は、その一本に繋がったストーリーにある。後半に進むにつれ、増える登場人物、入り組む人間関係、そして毎回ぶちぶちと切られる臨場感。せっかく乗ってきたのに・・という欲求不満の感情が大きい。

その点でナルニアは、毎回一つのストーリーをきっちり回収していく形式をとっている。登場人物の多少の変動はあれ、各話で起承完結を1本作り上げ、観客は置いてきぼりを食わない。現代のTVドラマで一話完結の形式ばかりもてはやされるのに、似ている。観客は映画以外にもやることに追われており、一つの物語に集中する余裕が無い。そこにきちんと配慮している。

現代の観客を考えて、思いやって作られている「ナルニア」シリーズ。「ハリー」に付いていけなかったと嘆く貴方も安心して、本作の壮大な冒険世界へお越し下さい。

ダックス奮闘{ふんとう}