「個人的には2008年度最優秀候補!」ヤング@ハート jack0001さんの映画レビュー(感想・評価)
個人的には2008年度最優秀候補!
命を賭ける・・・最近そんな言葉を頻繁に見受ける。
小さい頃の特撮ヒーローものテレビ番組で、よく聞かされていたフレーズだったことに改めて驚きを覚える。
そうは言っても当時なら、子供らしいロマンティズムだから許される面もあり、幾分かの無茶をしでかしても、親や世間からはさして気にもされなかった。
無邪気さとして見守られていた似非ヒーロー。
本当は泣き虫だったり、あおっぱな垂らしの悪ガキだったりだ。
それが子供の社会。
やがて大人となる。
そこではロマンディズムよりも事実が優先。
結果がすべてらしい・・・全知全能な神様と勘違いした連中が血相変えてそう言っていた。
嫌気がするほど彼らと何度も相見える。
やがて、とある人は、ある時ある瞬間にスウィッチが入り、ある行動に出てしまうのだ。
何かに賭けてみたい!
成長と言うべきか?無謀と言うべきか?
行くべきか?いるべきか?
実は単純なのだ。
日々は恒久的かつ関係なく刻まれ、僕らは平等に歳を重ねなければならない。
それさえ忘れなければ、行き急がずとも自然と答えを見出せるような気がする。
ヤング@ハート:Young@Heartは、米国マサチューセッツ州ノーサンプトンにて82年から発足したコーラス隊だ。
人口3万人に満たないほどの小さな町に住む彼ら。
その構成メンバーのほとんどが年金生活者、平均年齢は80歳だという。
彼らの唄う合唱曲、これが実に興味深く、全米での関心が高いのだ。
ジミ・ヘンドリクス、クラッシュ、ボブ・ディラン、ブルース・スプリングスティーン、デヴィッド・ボウイ、レディオヘッド、ソニック・ユース、ポリス、U2、コールドプレイ・・・etc.
ビング・クロスビーやクラシック音楽、あるいは「サウンド・オブ・ミュージック」でのジュリー・アンドリュースを愛聴する世代が、明らかに彼らのシーンよりずっと後の、近年~現在のロックをレパートリーとしているのだ。
まず、この時点で置き換えて欲しい。
日向ぼっこしたり手押し車を持ったアナタの周りにいるお年寄り、彼らがミスチルやビーズの曲を合唱するような感覚だ。
有りえない風景だ・・・でも現実にあるのだ。
実にすがすがしい。
かっこいい。
歳をとることに躊躇している場合じゃないのだ。
アメリカ経済の近況は実に危機的だが、そんな時世などに関係なく、彼らの日常はヤング@ハートの活動で支えられている。
唄うことがすべてとまでは言い難くも、少なくともこう答えている。
生きることが好きになる!
現実的に彼らには死が圧し掛かっている。
本当に日常の出来事として。
高齢であるが故、今日明日にでも仲間うちの誰かが逝ってしまう・・・確かに悲しい。
だが彼等は自然現象として受け入れる。
その姿が実に頼もしく映っていた。
死を乗り越えるというよりも、迫る死と真摯に向き合いながら高貴で誇り高く、ユーモラスに生を全うする。
ステージに上がった彼らのお揃いのシャツは、決して死装束なんかじゃなく、パフォーマーとしてのスタイリッシュさと輝きに溢れている。
それが何よりも印象的に映えていた。
このグループの厳格な指導者であるボブ・シルマンの台詞が、僕の胸を突き刺した。
「仲間の死、こういう時こそ唄うことが大事である、それが、追悼でもあり人の死に敬意を表することになる」
この言葉はこう解釈したつもりだ。
彼は決して無理維持したり強行な手段を取っているわけではなく、自然な人間の寿命に対しての率直な思いを告げたのだと。
残された仲間が、逝ってしまった故人の魂を継続しながら、ヤング@ハートを今日も牽引している。
確かにいつ死ぬかは分からない。
だから何かに賭けたいと駆り立てられる気持ちも分かる。
全うしようと志した者を引きとめる権限は無い。
だからこそ賭ける時と場所は重要なのだと思う。
もしアナタが何かを求めて無謀に賭けたいのなら、ひとまず落ち着いてみてはいかがだろう?
足元に転がっているモノを拾い上げ実感すればいいのだ・・・手に取る感触、聞こえる耳、声、遠くを見据える目と空気の味。
そしてもうひとつ!
「唄にはエネルギーがあって、俺たちにもエネルギーがある」
一つ残さず、無駄にするな!