「モルダー&スカリー再び」X-ファイル 真実を求めて Chemyさんの映画レビュー(感想・評価)
モルダー&スカリー再び
『X-ファイル』が好きだ。9シーズン全202話+前作映画1本、全てを見た・・・見続けた・・・。いったいどこに魅力があるのか?何がファンの心を掴むのか?それは物語の面白さ以上に、主演2人のキャラクターにある。そう、これは極上のラブ・ストーリーだからだ。
海外テレビドラマブームの昨今、話題のドラマが目白押しだが、最近の流行の傾向は、展開の速さや、ドンデン返しの続く意外なストーリー展開だろう。これは確かに面白くてひきつけられるが、見ていて非常に疲れる・・・。そして必ず途中で飽きる・・・。全シーズン踏破する人は少数ではないだろうか?『X-ファイル』は、海外ドラマブームの礎を築いた作品(シリーズ開始は今から16年前)であることは間違いない。しかし、現在のスピーディーなドラマを見慣れた若者は、完全な答えの出ない基本1話完結のこの物語に飽きを感じるかもしれない。それは、この物語を、「超常現象を扱った物語」と認識しているからだ。中にはホラーがダメとか、UFOに絡んだ政府の陰謀などウソくさいと思う人もいるかもしれない。しかしそれらの人は本当の『X-ファイル』の魅力を分かっていないのだ。
本作はモルダー&スカリーのコンビの絆や成長、そして微妙な恋愛感情など、人間ドラマとして見るのが正しい。キャスティングの妙も相まって、「変人(スプーキー)」モルダーと「マジメ人間」スカリーのコンビネーションの面白さ。この全く正反対の2人が、様々な事件を通して築き上げた信頼関係。単なる相棒ではなく対等なパートナーシップ。彼らは、1つの事件を間逆の方向からアプローチして、答えを見つけようとする。時には、考え方の違いからぶつかり合いながらも、相手の意見を聞き、理解し、再び自分なりの考えをまとめていく。この2人の理論の構築課程も大変興味深い。『X-ファイル』に登場する様々な事件に、正しい答えはないのだ。モルダー側の超常現象としての答えと、スカリー側の科学的な答え、どちらも正しい(正しくない)のである。これは見ている我々が「信じる」か「信じないか」によって答えを出せばいいのだ。
さて、この2人の完璧なパートナーシップには、当然のことながら男女間としての恋愛感情が含まれる。しかし、彼らは見ている我々がもどかしいほど、くっつきそうでくっつかない。精神的には濃密な関係でありながら、肉体的には全くのプラトニックを保つのは、2人が「純情」だからとか「理性的」であるからではなく、男女間では通常ありえないほど「対等」な関係であるからだ。彼らは男性が女性を庇護する従属関係にない。女性であるスカリーが命賭けで窮地に陥ったモルダーを助けるということもしばしばあるし、男性であるモルダーが危険な場所に潜入する際に、ありがちな「危ないから君は残れ」などという男尊女卑的セリフを決して言わない。むしろ「君が必要だ」と素直に援助を求める。この全くな対等関係こそ、理想の恋愛関係のように私は思うのだ。ここまでの信頼関係を築けたのは、様々な事件を乗り越え、9年という歳月を、ひたすら「真実」を求めてきた2人ならではだ。そして我々ファンは、その2人の関係の進捗を、一喜一憂しながら見守ってき続けた。そしてついに今、シリーズ終了から6年の歳月を経て、再び2人の新たな関係を見ることの喜び!彼らは6年の間、じっくりと関係を深め、新たな「真実」探求に動き出す。今後彼らが、また新たな問題に直面するのならば、我々はずっと見守っていく!2人の絆と、そしていつか真実が明らかになることを「信じたい」から・・・。