レイン・フォール 雨の牙のレビュー・感想・評価
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ストーリーがチョット込み入ってすぎて、分かりづらい。椎名とゲイリーとの10分にわたる直接対決のシーンは見応えあり
東京を舞台にしたアクション・サスペンス。登場人物の大半は、日本人だし、ロケ地もほとんど国内。しかし、映像は徹頭徹尾ハリウッド映画のそれであり、東京の風景が、全く違った景色に見えました。ファインダーから見つめる景色のアングルとか感覚が、われわれ日本人が見ているものとは全然違うのです。ちなみに撮影は『M:I-2』を撮ったジャック・ワーレムハイム。 そして、とにかく渋い!ハードボイルドの王道をいっているかのような影と闇を活かした映像。それは主人公の暗殺者レインが潜む街を暗示させるのに充分でした。 風景ばかりではありません。設定も変わっています。 レインを追うのは警察でなくて、CIAアジア支局なのです。そして『24』のような情報戦が展開するということも日本映画にはないところ。都会に設置された監視カメラを操って、CIAはどこまでもレインを追いかけます。 そして主演のレインを演じる椎名桔平も、大変身。テレビ朝日の土曜サスペンス劇場で見せる刑事役とは顔つきが違います。カーチェイスなど大掛かりなアクションはないものの、特殊部隊出身という設定もあり、接近戦のアクションでは素早い動きを見せていました。 芝居とは言え、接近戦では怪我がつきもの。そのため撮影に入るかなり前から、特別なトレーニングメニューをこなしていたそうです。 でもこの役は、松田龍平にやってほしかったなと思います。 椎名桔平は、本作の撮影と『余命』の撮影時期が重なっていたそうで、役の切り替えが大変だったことでしょう。 椎名が尊敬する俳優ゲイリー・オールドマンとの10分にわたる直接対決のシーンは見応えありました。椎名の提案で大俳優をぶん殴るシーンも遠慮せず演じています。 撮影方法で大きく違うことは日本のドラマと違って、細かいカットがないこと。本作では2カメで回しっぱなしなんだそうです。やり直しなしでも良いほうのカメラの画を使えばいいと、細かいことは流してしまうのです。その結果、演じている俳優のエモーションが活きてきます。役者が思うままに演技した画を撮って、それを後でうまいところを拾うという面白いやり方ですよね。その分情感が出ていたと思います。椎名もこれには感動していたようです。 但しストーリーがチョット込み入ってすぎて、分かりづらいです。もう一回見れば、なるほどと思います。レインが果たして暗殺を行ったのかということすら、終盤まで確認できませんでした。もとよりセリフを絞り込んで、映像で見せていく作品なので仕方ないのかもしれません。 映像という点では、レインが身柄をかくまうみどりを見つめる視線の描き方が印象的でした。ハードボイルドには似つかわしくないほどの優しさに満ちたものでした。 みどりの父親を殺した暗殺者としてレインは、みどりに贖罪の気持ちを抱いたのか?愛を感じたのか、どちらなんでしょう? 緊迫に包まれたシーンのなかで、ほっとするいいシーンでしたね。 ところで、登場人物のCIA支局長が語ったセリフに、こんな言葉がありました。 日本は、アメリカの人口の1/3、国土はわずか5%しかないのに、公共事業費は、1.5倍も使っている。その予算は、国土交通省が握っている。日本という国は、国土交通省の国なんだと。 それを支えているのが赤字国債と、民営化される前の郵貯を財源とした財政投融資でした。 際限のない公共事業費の拡大。いったい誰がどう歯止めをかけるのか。 公共事業礼賛、官僚型政治推進。それが続く先は、間違いなく増税地獄です。 その辺のことをネタに描く『相棒』シリーズは、上手い展開を見せます。 本作も、もう少し官僚支配の闇の部分をえぐって欲しかったです。 但し同盟国であるアメリカが、いざ国益が絡むとCIAを使って、平気で日本政府を揺するネタを見つけて脅そうとする様は、強烈に描けていたと思います。 いざとなれば、日本国民の射殺も厭わないし、地元警察や諸機関に命令して交通規制を強制してしまうCIAアジア支局長のタカピーな姿勢には唖然としました。 原作者は、元CIA工作員なので、フィクションでは済まされないところですね。 ということで、原作もシリーズ化されていて、本作も続きがあるような終わり方だったので、次回作に期待します。
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