「浮腫んでる顔がイイ」フェイク シティ ある男のルール 小二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
浮腫んでる顔がイイ
最初に言っておくけど、ちょっとこれ古臭い。
公衆電話や分厚い電話帳なんかが出てきたけど、時代設定いつなんでしょう?(携帯電話も出てくるから現代なんでしょうけど。)
そういう小道具以前にいろいろと古臭い。
でもねえ、こういう古臭いの個人的に大好きなんだよなあ。
結局私が好きな映画ってこんなのなのか…と、若干恥ずかしい気分にもなる。そういう偏愛で星4.5。(世間的には星3くらいが妥当なのかな)
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「L.A.コンフィデンシャル」のジェームス・エルロイが脚本。
エルロイ好きとしては、109分という短さでは言及していない部分も勝手に脳内補完(というより妄想)して楽しんだ。
基本的なストーリーは「L.A.〜」を思いっきり小粒にした感じだろうか(L.A.四部作と比べると百分の一くらいの小粒感)。
お約束の警察内の暴力・腐敗・裏切りエトセトラ。
腕は立つけど直情型でコントロールがきかない刑事役(「L.A.〜」のバド・ホワイトを彷彿とさせる役)にキアヌ・リーブス。
バド・ホワイトといえばラッセル・クロウがはまり役だった。彼の「汚れてるけど純情」って感じがもの凄く良かった訳だが…。
キアヌは昼間から酒をかっくらっても暴れてもラッセルほどの汚れ感がない。全然ない。そこがキアヌの良さなんだからと思って我慢して観続けてると、一瞬狂気の裂け目みたいな表情を見せてくれて、それが良かった。
あと調子悪い時のキアヌ特有の浮腫んだ顔もアル中刑事の設定には合っていた。
L.A.四部作のダドリー・スミスに相当する役をフォレスト・ウィテカー。
ウィテカーのアミン大統領(ラストキング・オブ・スコットランド)ってもの凄く怖かった。本作でもその種の怖さが漂う。ただ微妙に服装が変で少しコミカルになっちゃって残念だった。
その他のキャストも、大好きなヒュー・ローリー(禿げてた)、クリス・エヴァンス(お坊ちゃん感が良かった)など楽しめた。
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あとデヴィッド・エアー監督って不思議だなあと思った。
妙にリアルな描写と、ステレオタイプで書割りみたいな描写が混在していた。
エルロイ小説の狂犬ぶり(ディズニーとかケネディとかアメリカの夢全てに遍く噛みつく感じ)って、そのまんまだと映画化しづらい。
映画版「L.A.コンフィデンシャル」みたく手際良くその狂犬ぶりを押さえるか、この映画みたくステレオタイプに落とし込むしかないんだろうなあとも思う。