劇場公開日 2008年8月9日

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「補欠には補欠のドラマがある。」ひゃくはち いきいきさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0補欠には補欠のドラマがある。

2008年8月4日

泣ける

笑える

 不謹慎だけど喜べ。

 野球に学生生活を捧げていても、タバコは吸うし、合コンはするし、
 だが、補欠でも自分が出来ること、やるべき事に努力を重ねて、
 全うする姿に涙する。

 高校野球の名門である京浜高校野球部の雅人(斎藤嘉樹)とノブ(中村蒼)は、
 補欠であるものの猛練習に耐えて、
 ライバルチームの偵察や雑用ばかりであっても、
 ベンチ入りを誓い日々努力を重ねている。
 そんな中、将来有望な期待の新人が入部してきたために、
 ベンチ入りの争いはさらに厳しく、激しくなっていく。

 まさに青春の象徴のような夏の甲子園。
 でも、いくら練習を重ねようと、少しの才能があろうと、
 甲子園の土を踏むことが出来るのは、
 選ばれたほんの一部の人間だけである。
 それ以外の部員たちには、それこそ野球以外のことを全て犠牲にしても、
 死に物狂いで練習をしても、ベンチ入りすら出来ない補欠たちが存在する。

 甲子園出場を目指す名門校のヒーローを主役にするのではなく、
 乱闘を起こした不良たちでもなく、
 何とか練習についていけるぐらいの万年補欠部員を、
 補欠でベンチ入り出来るか、出来ないかという微妙な2人の部員の日常を、
 レギュラーとの差を感じながらも、
 ベンチ入りを目標にして野球に情熱を注ぐ姿を、
 2人の葛藤を友情をストレートに泥臭く描いている。

 ひゃくはち とは、もちろん煩悩の数で、たまたまなだけだが、
 野球のボールの縫い目も108だというのは有名な話。
 高校球児といえども、煩悩全開で抑える事はなく、タバコは吸うし、
 酒は飲むし、合コンにも行ったりする。
 この辺はどこまでリアルなのであろうか?まぁ合コンぐらいは、
 ちょっと弾けてしまうぐらいは、いいとは思うが、
 上手くやってるんだろうね、発散してるんだろうね。
 だから、PG-12なんだろうね。

 ベンチ入りすれすれであった2人の大親友が、
 何とか19番と20番の背番号を貰うが、有力な新入生の入部によって、
 彼が一塁手だったために、ノブは三塁手にコンバートして、
 2人は闘争心剥きだしで、争う。
 争う熱さも、その先の熱い友情も、いいなぁと思う。

 主演の斎藤嘉樹はいい表情するし、持ち味を活かしていたが、
 中村蒼の方は、ちょっと表情もぎこちなく、
 台詞回しも巧いとはいないけども、2人のらしい友情は、熱さは、いい。

 他はこんな監督も居そうだなという、竹内力はアクの強さを魅せつけるし、
 父親役の光石研も泣かせてくれるし、
 桐谷健太はこの手の作品には欠かせないなぁと、コーチだけどね。
 レギュラー役の高良健吾と、北条隆博は、一緒に合コン行ったりして、
 ほとんど対立もしなかったので、あまり印象に残らず、
 無難に嫌味のないキャラを無難に、記者役の市川由衣は演技ではなく、
 顔がデビュー当時に戻っちゃった?
 というような撮られ方でいいのであろうか、と思ってしまう。

 はっきり言って、ほったらかしで、
 描く必要なかったんじゃないのかというシーンも多いし、
 それで2時間越えになってるなら、削ってもよかったのではないかと思う。
 しかし、あまり期待していなかったというのもあるかもしれないが、
 観る前にルーキーズの最終回を観たばかりで、
 スイッチが入りやすい状態だったのかもしれないが、
 泥臭くて、熱くて、リアルな練習シーンには好感が持てるし、
 笑えるシーンも、ちゃんと笑えたし、父親の想いには泣かされたし、
 自分たちが出来ることを全うした2人に涙したし、
 熱くなりたい人にはオススメ。

 練習は裏切らない。

いきいき