劇場公開日 2009年11月21日

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「国家が崩壊して金の価値がなくなる世界で、中国に金で命を預ける」2012 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0国家が崩壊して金の価値がなくなる世界で、中国に金で命を預ける

2020年4月25日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波

総合:55点 ( ストーリー:30点|キャスト:65点|演出:50点|ビジュアル:75点|音楽:65点 )

 大作だし金もかかっているだろうし期待したのだが、それほどのものでもなかった。

 まず厳しい表現が無い演出が弱い。人が死に傷つき都市が破壊され国家が消滅するほどの大災害なのに、その怖さが伝わってこない。災害の酷さゆえに目の前で人が体を潰されて死んだりしなければならない場面で、そういうことが起きない。
 むしろどんなに地割れが起きて倒壊した建物から破砕した落下物が降り注いでも、車と飛行機がすいすいと脱出してしまう。これで大災害といえどもこんなにも安全が保障された世界の話なのだとわかってしまった。

 物語もご都合主義で単純で綺麗ごとで終わる。災害自体の設定とそれがもたらす社会の混乱と人々の暴走行為の描き方も緩い。とってつけたような家族愛と他人に対する愛情も綺麗ごとで底が浅い。
 それに加えて国際関係の設定がご都合主義で、大災害が起きることを予見すると、対立していたはずの各国がお互いを信用し足並み揃えて共同で一致団結してしまう。混乱状態で秩序を失い死に物狂いになった人々の暴動や裏切りといったこともない。

 一番駄目なのは、世界中の金持ちに金を出させて脱出用の船舶をなんと中国に作らせて乗り込もうとするところで、最も信用してはいけない国によく世界は大金を預けて製造だけでなく運営管理までをさせたものだ。
 自分の命を繋ぐものは、絶対に信用できる相手にしか委ねてはならないのは常識だし、だから例えば国を守る軍隊は自国で運営するものである。これではまるで米国の軍隊の運営を金を払って中国に任せるに等しく、いつ裏切られるかわかったものではない。そして中国はその手のことでは悪評が高い。災害後の世界を支配するために中国が約束を破り中国人だけ乗せて勝手に船を出したらどうするつもりだったのだろうか。これには呆れてしまった。
 おそらく作品中で中国が裏切りもせず重要な役割を担ったのは、物語上の都合ではなくて映画の売上のためだろう。最近の映画産業は世界有数の市場である中国の視聴者を惹きつけなければ利益が出しにくい。だから中国が登場して美味しい役割をする小話をどこかに挟んでおかなければならず、それが今回の中国の役割として登場したのだろう。

 唯一の見せ場は派手で豪華な映像なのだが、それはそれで確かに迫力はあった。だが派手なだけで安全で怖くないし、地割れや崩壊が連続してくると、同じような映像ばかりになって飽きてくる。映像を派手にすることにだけ注力するのではなく、どれほど視聴者の心に突き刺さる映像と演出にするのかという視点で作ってほしかった。

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Cape God