「人の望むものは・・」モンテーニュ通りのカフェ odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
人の望むものは・・
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パリの高級店、一流ホテルや大劇場が立ち並ぶモンテーニュ通りのカフェ「テアトル」で働くことになったジェシカが店や出前を通して出合った名ピアニスト夫婦、メロドラマ女優、老アートコレクターとその息子、若い愛人、劇場管理人たちの人生模様を第三者的視点で描いてゆく群像劇。
ブルゴーニュの田舎から出てきた貧しいジェシカにすれば出会う人は皆、幸運に恵まれ成功した人たちに思える。
不満をこぼす女優カトリーヌにジェシカは「あなたは何でも持ってるのに」というとカトリーヌは「芝居の始まる前に幕間から客席を除くと、できるだけ前の席に移ろうと必死のお客がいる、でもいざ前の席に座ると近すぎて何も見えないことに気付くの」と語る。原題のFauteuils d'orchestre(オーケストラシート)はその例えでしょう。
この映画の良いところはそれぞれの不満や悩みがお金や名声ではなく自己実現の高みにあるところでしょう。格式ばったコンサートでなく普段クラシックに縁のない人達に聴いてもらいたいという名ピアニスト:ジャン・フランソワの願望は劇中の実技指導や吹き替え演奏をしたフランソワ・ルネ・デュシャブルさん自身の選択した生き方でもあります。
カトリーヌは「サルトルは世間知らずのお坊ちゃん」と豪語しますが出てくる女性陣の方がリアリストで逞しく思えます、一同、なんとか収まるところに収まった感、一抹の不安がよぎりますがそれもまた人生なのでしょう。
劇中に流れるシャンソンやピアノも効果的で着メロにも遊び心があふれていて素敵ですね。
脚本・監督のダニエル・トンプソンさんの女性ならではの感性がほとばしる良作でした。
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