「まともじゃない人生をリアルに映像化」ベンジャミン・バトン 数奇な人生 mac-inさんの映画レビュー(感想・評価)
まともじゃない人生をリアルに映像化
いつものデヴィッド・フィンチャーとは違い、あまり奇をてらうようなキャメラワークもなく、丁寧にまともに、まともじゃない人生をリアルに映像化している。
内容は、老いること、死ぬこと、生きること、時間が流れていくこと、それが人生であること。そんな普遍的なことが、時間が逆に流れる(老いから段々若くなり、最後は赤ちゃんになってしまう)主人公を通して描かれる。
ストーリー展開の面白さで見せる映画とちょっと違う。ストーリーはあくまでも、年代を重ねることに主眼があり、その時々のエピソードが可笑しかったり、ロマンチックだったり。そのなかに、肉親の愛とか、育ての母の愛とか、恋愛とかがちりばめられて、それを重ねることにより、主人公に感情移入してゆく。
「フォレストガンプ」に似ているが、あの映画は、ガンプを通してアメリカ現代史を描いた。「ベンジャミン・バトン」は、年代史というより、若さと老いと時間、それに死んでゆくこと、という個人的な、だれでも起こることをテーマにしている。そしてその愛おしさを描いている。小さくなったベンジャミンが、朝食を食べたにもかかわらず、まだ食べていないと怒る姿に、自分の父を重ねて見てしまった。年とってまた子どもに帰っていくんだな、とまさに子どもになったベンジャミンを見て思ってしまう。そのように観客側が、自分のことと照らし合わせて見てしまう。
ゆったりしたテンポでストーリーは流れてゆく。最初は少しかったるい展開が、段々後半、このゆったり流れるテンポが見ている側がもっとゆっくり見ていたいという気持ちとよく合っていた。
CGがリアルに老いと若さを表現してびっくりする。あまりの自然な老い方、若返り方で、ブラピの若いシーンは、「リバーランス・スルー・イット」のころのブラピのように美しい!そしてそれとその時代に一緒に出るケイト・ブランシェットは、中年そのもの。若いころはしわもなくスレンダーなのが、しわがあり、腹回りやお尻の肉がたるんでいる!CGがこれほどリアルに自然に若がえらせたり、年を取らせたりできるのかと思う。
ケイト・ブランシェットの踊りも、顔を後で合成したのかもしれない。でもまったく自然。CG含め特殊効果がとても自然でまったく違和感がない。
そしてこの映画の魅力の半分以上は、ケイト・ブランシェットだと思う。ブラピ同様、若いころから、老人になるまで、リアルに感情豊かに魅力的に演じている。