「巻き戻っていた時間が、止まっていた時間が、前に進み出した」ベンジャミン・バトン 数奇な人生 スライムさんの映画レビュー(感想・評価)
巻き戻っていた時間が、止まっていた時間が、前に進み出した
感動して泣いた。
主人公が、その過酷な運命に抗いながらも、最後はその運命通りの結末に向かい、そんな主人公を愛していた周囲の人々が最後まで支える…こういう展開の物語に本当に弱い。全然違うけどアニメのCharlotteとか思い出した。
物語の時代背景も良い。どこか神秘的な風に見える1900年代前半の世界は、宮崎駿監督作品が描く古い時代に、似たような雰囲気を感じた。あの当時の激動の時代を生き抜いた人々のロマンは、どうしても力強く感じてしまう。
あとは個人的に、船で敵船に襲撃されるシーンが好きだ。機関銃?のあの演出は凄いと思った。戦争時代を舞台にしたかまらも戦争をテーマにしないこの作品において、あのような描き方はピッタリだと思ったし、主人公が感じる恐ろしさが伝わるようなカメラの向きだった。
冒頭の戦争の巻き戻しシーンと、逆に進むように作られた大時計。物語のテーマを別の事象を通して比喩する表現はとても好みだ。
ラストシーンのハチドリのような演出も難い。
そしてハリケーン。荒ぶる外に囲まれた病院の中で語られていくこの物語を、ただ神秘的な伝記ではなく、生と死の物語だとはっきり感じさせてくれるのは、病院の中に漂う閉塞感と不安感が影響していることも少なからずあるだろう。
そして何より特殊メイクこそしているが、吹き替え無しで若い頃から老年期まで演じたブラッド・ピットとケイト・ブランシェット。素晴らしい俳優すぎる。ティルダ・スウィントンも短い出演シーンながら凄まじく良かった。
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