劇場公開日 2009年2月7日

  • 予告編を見る

「生きることは記憶の連続」ベンジャミン・バトン 数奇な人生 Gustav (グスタフ)さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5生きることは記憶の連続

2020年5月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

「セブン」「ファイトクラブ」に続くデビット・フィンチャーとブラッド・ピットの三作目は思いの外大人しくなって刺激的な描写もなく、落ち着いたタッチで1918年から2002年までの主人公の逆転の人生を描く。第一次世界大戦終結から第二次世界大戦を経て、現代のハリケーン襲来の時代背景は物語に的確に内包されている。プロローグの盲目の時計職人が戦争で息子を失う悲しみから逆回りの大時計を製作するエピソードから、バトンが父親に棄てられ老人ホームに働く黒人女性に育てられる流れがいい。ケイト・ブランシェット演じるディジーとの出会いからすれ違いも、彼女の安定した演技力で魅せる。ただ、ふたりの結婚と出産の幸福から暗転する後半が弱い。現代劇のファンタジー映画で思い出されるのがトニー・リチャードソンの「ホテル・ニューハンプシャー」とジョージ・ロイ・ヒルの「ガープの世界」だ。リチャードソンの逞しさ、ロイ・ヒルの強かさと比較するとフィンチャーはお人好し過ぎる。ユーモアとアイロニーを前半加味して、愛する家族から別離を余儀なくされた後半のバトンの宿命をもっと強調したら良かったのではないか。
老人ホームで主人公が話し掛けられる、雷に7回も打たれたおじいさんのモノクロショットのユーモアが唯一可笑しい。

Gustav