劇場公開日 2009年2月7日

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ベンジャミン・バトン 数奇な人生 : インタビュー

2009年2月6日更新

文字通り逆さまに人生を生きていくベンジャミン・バトンと運命的に出会い、彼の奇妙な人生をまるごと受け止めて生きていくデイジー。そんな複雑な役に挑んだオスカー女優ケイト・ブランシェットに、デイジー役へのアプローチの仕方や撮影の苦労などを聞いた。(取材・文:森山京子)

ケイト・ブランシェット インタビュー
「人は愛すれば愛するほどより人生を生きるようになる」

若き日から86歳の老女になるまでのデイジーを1人で演じきった
若き日から86歳の老女になるまでのデイジーを1人で演じきった

──完成した作品はもうご覧になりましたか?

「実は夕べ初めて見たの。撮影からすごく時間が経っているから、その時の経験は忘れて、素直に観客の1人として見ることができた。そして自分がこの映画の一部であることを心から誇りに思ったわ。これはまさにテクノロジーが物語を語るために使われている映画よ。デビッド・フィンチャーは潜在的に不可能で空想的な物語を 、すごく現実味のあるものに仕上げてみせた。だからとても深い感情に溢れているのよ」

ケイト・ブランシェット (LAプレミアにて)
ケイト・ブランシェット (LAプレミアにて)

──デイジー役をオファーされた時、どう思いましたか?

「フィンチャー監督とブラッドが何かの企画について話したいと言ってきたら、そのミーティングに参加しないなんてあり得ないわ。エリック・ロスと脚本を練る作業もエキサイティングだったし、こんなに特別なこと──6歳から86歳まで演じられる役──は他にないと思ったわ。子供時代の声も私がやっているの。普通なら4、5人の俳優を使うところを1人で通してやるというのはかなりの挑戦よ」

──デイジーにはどんなふうにアプローチしたのですか?

「彼女を客観的に見るのは難しいわ。この映画の野心やハートは余りにも大きくて、K2(世界第2位の山。標高は8611メートル)にアタックするような経験になると感じていたの。一体どうやればそこに登れるのか、皆目見当がつかなかった。もちろん脚本を読めば、どんな作品になるか、デイジーがどんな人間でどう演じればいいか分かるわ。でもそれだけじゃこの映画の芸術性を大事にすることにならないのよ。脚本から離れて何か他のポイントを探す必要があると思ったの。でまず、自分の人生のすべての大きな出来事を再検証したわ。それを一旦放り出して、今度はデイジーの人生の出来事をチェックしたの。彼女の転機は交通事故が起きて体がダメになった時よね。私も20代の後半に似たような体験をしていて、その時の感覚、感情はとてもよく覚えているの。そういうことから、デイジーにアプローチして行ったのよ」

──その感覚というのは具体的にどんな状態なんですか?

睡魔や時間との戦いだったという本作の撮影
睡魔や時間との戦いだったという本作の撮影

「若い時は自分が永遠に生きるように感じているから、なんでも出来るし、傷つきにくいと思っている。でもそのフィーリングは今の私にはもうないの。デイジーも事故の後でそれを失うのよ。人は愛すれば愛するほどより人生を生きるようになるし、たくさんのものを失うという事実も知っていくのよ」

──演技面で最大のチャレンジは何でしたか?

「スタミナを保つことかしら。だって大がかりなメイクをする日は朝4時半入りなのよ。そして強烈に暴力的な韓国映画を見ながら椅子に座ったまま眠りに落ちる(笑)。目を覚ますともう11時で、特殊メイクが崩れないうちに撮らなきゃいけない。時間のプレッシャーも相当あったわね」

──老けメイクはいかがでしたか?

「特殊メイクの影で見落とされがちだけど、照明の効果も大変なものなのよ。監督は時に女優に不親切に照明を当てることがあるけど、そう言うとき、彼女は10歳は年老いるの。だからデビッドもそうしたわ(笑)」

>>デビッド・フィンチャー監督インタビュー

インタビュー3 ~ブラピ、ケイト、フィンチャーが語る「ベンジャミン・バトン」(3)
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