「j普段何気なく読む新聞報道の裏で起きる群像劇の怖さがひしひしと!」クライマーズ・ハイ Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
j普段何気なく読む新聞報道の裏で起きる群像劇の怖さがひしひしと!
私は、こう言うテーマの映画が大好きで、個人的に文句無く高得点を付けてしまいたくなる。
もともとこの映画の原作者は、ミステリー作家の横山秀夫氏の作品である。この横山氏の作家デビュー前の職は、本当の新聞記者だから、あの1985年に起きた我が国の最悪にして、最大の惨事となった飛行機事故をも実際に取材した経験があるのだろう。
新聞記者の内部事情に精通している彼ならではの、迫力のあるストーリー展開のお話だ。
事件を追う文屋さんの取材を進める過程で次第に明らかになる事件の真相。その真相を巡る過程で起こる記者たちの報道に対する真実を伝える事への正義と現実の社会の壁。どこまで自分達記者の記者魂を貫く事が出来るのか?もうワクワク、ドキドキ引き込まれる。
事件の追究と、報道の自由、マスコミの正義とマスコミ取材の限界・実際の事件を絡めたフィクション仕立ての社会派ミステリーに仕上げるのは、今回の作品は特に作家の記者としての実体験をふまえて描かれるストーリーであるだけに、しっかりとした細かい部分も描かれていて、リアリティー満点で、最もこの作家の得意とする部類の世界なのだろう。
そしてこの映画の監督も原田真人と言えば社会派の映画ではド迫力のパンチの効く監督だから、これで面白くない訳がない。
俳優陣も、堤真一・堺雅人・山崎努・みんな芝居達者で個性派揃いなこの映画、やっぱり観終わって、ハズレ無しの大満足でした!!
今から4半世紀も前の時代の地方新聞社、携帯電話も無ければ、メールも無いし、そんな時代でありながらも、時間が総ての勝負の勝敗を左右する事になる新聞業界での記者同志の取材合戦の闘いはいかに・・・!友情と対立、そして記者は何故命がけで真実を追求するのか?一人の人間として何故生きるのかと言う、生きる目的、価値、取材を通して体験する記者の生き様は、平凡な私にも、共感できる共通するテーマ。
「クライマーズハイ」とは山岳者の限界に挑戦する事で得られる自然な高揚感と言う、ナチュラルハイの状態の事だったのだと。どこまでも、ハードで限界を感じれば感じる程にチャレンジしてしまうと言う山男の生き方と記者の生き様が徐々に一つに重なっていく。
都会育ちの、甘ちゃんである自分には、限界に挑戦する事もそれ程無く、ユルユル生活体験者なだけに、この世界観には、魅了された。
しかし山に登るのは、時に降りるために登るというのも意味深なセリフだった。
どんなに上へ上へと頂上を目指し、より高い山を目指して登りつめても、必ずその上にはその上を征服している者が常にいると言うのも、上を極めた人だからこそ、リアルに伝わって来るセリフだった。
しかし、そんなに高く無くても、景色をゆるゆると楽しみながら生きていく道もあるのになあと考えてしまう私は、何処までのゆるゆるの人生だけど、この飛行機事故で本当に亡くなられた歌手の坂本九氏のヒット曲が「上を向いてあるこう」だったが、そこからこの物語は生れたのだろうか???
この物語の中心は、この航空機事故の取材をする記者側に特化した話で展開するので、あまり当時の現実の事故被害者の様子に意識が向かずに観てしまったけれど、実際には524名の方々が搭乗した飛行機の墜落事故で、これほどまでの大惨事は、日本ではそれまで無かった史上最悪のケースだろう。
犠牲者の方々のご冥福をお祈りし、人生は1度と言う事実を肝に銘じ、やはり私も日々を大切に、そして「上を向いてあるこう」と気持ちを改めて、我が人生の教訓としたい。
最後に、新聞記者のミステリー物語として興味深かった作品を記しておきます
「消されたヘッドライン」「大統領の陰謀」この2本は面白い!!うーんおまけで、「ザ・ペーパー」って言うロン・ハワード監督の映画も確かありましたが、これはコミカルな映画だったような印象しか残っていない気がする。