「俳優陣vs.演出」クライマーズ・ハイ ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
俳優陣vs.演出
1985年、群馬県御巣鷹山で起きた日航機墜落事故。
今でも当時のニュース映像はしっかり記憶に残っている。
本当にものすごい事故だった…。
生存者が四名いたことが奇跡のように感じられたほど。
でも、この事故についてを描いた作品なのかというと…。
確かにそれをメインに扱ってはいるのだけれど、
あくまで舞台は北関東新聞社の内幕で、記者が主人公。
またもや原作は未読なので^^;比べようがないけれど、
既読の方の感想を読むと、私が「?」だった部分が一掃。
…やはり、相当部分が抜け落ちてしまっているようだ。
まず冒頭からして、チト分かりづらい。
現在と過去を並行させるつくりは珍しくないんだけど、
リアルに現実味を出そうとしたのか、すっ飛びまくり!?
息子との関係もそこそこに、突然同僚はクモ膜下で倒れ、
墜落事故がメインとなったら、また飛んで父親との関係、
部下との繋がりも描き出さないまま、記者達は山に入り、
ついには記事が間に合わない。そうなると今度は
「日赤大久保、日赤大久保」と念仏のように理由を唱える。
…うーん。この社の人間関係は原作を読んだ方が良さそう。
ある程度の年齢で^^;事件の背後が分かる世代ならいいが、
そうでない世代には、とっても不親切。
原田眞人監督の演出は、リアルな臨場感に長けているけど
人間の繋がりを丹念に描かないのが多いから、淡調で希薄。
どうしてもっと掘り下げて描かないんだろうか(常に謎…)
ドキュメンタリー狙いなのか?いや~それとも違うような。
事故機のことについても、社内での確執についても、
父と息子の関係についても、事実→回想→終了の繰返しで、
どんなに役者がアツく演じてくれていても、観ている側は、
あの人怒ってるけど、何で?みたいな感覚になってしまう。
泣かせてくれ~とか、感動的にしてくれ!というのではなく、
もっと丁寧に「人間」を描きましょうよ…というのかなぁ。
それとなんだか、テーマが定まっていなかった感もあります。
しかし、ほぼ出ずっぱり!で、大熱演の堤真一をはじめ、
そうそうたるメンバーが、とてもいい演技を見せているので
その演技合戦は観応え十分!!けっこうドキくドキハラハラ。
ここでもまた、それぞれの俳優に焦点を当てては、また次。
という感じが続くので^^;ちょっとイライラしましたけどね。。
観終えてみると、主人公が山(父親)を一つ乗り越えて、
自身が父親になれたことで、仕事麻痺していた感覚から脱し、
関係修復に乗り出す…という、自己再発見物語になっている。
いや~おそらく、原作は素晴らしいのだろうなと思いました。
事故の犠牲者やご遺族の方々に、どう映る作品なんだろう。
(事故の教訓、熱いブンヤ魂、遠憲のキレ度は抜群☆でした)