「職業倫理との葛藤はご都合主義。 惜しい。」アイズ(2008) とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
職業倫理との葛藤はご都合主義。 惜しい。
人の職業を取り上げようとするなんて ( `ー´)ノ
シドニーにしたら、生死の際まで追い込まれた気分なのだろうが、医師にしてみたらよい迷惑。
でも、話の都合上、仕方がないのか。
職業上のコンプライアンス、職業アイデンティティを守るのか。ヒロイックな行動をとるかと、安易な盛り上げ方?
ここ、もうちょっとひねって欲しかった。
手塚治虫先生の『ブラックジャック』にも、このアイディアを使った話があった。
サスペンスでは使い古されたネタ。
だからこそ、”アイディア”ではなく、脚本・演出の良否が決め手となる素材なのに。
『シックスセンス』的な驚かせ方、展開。(『アイズ』にはバディ感はない)
ラスト『オッド・トーマス』的な爽快感・スペクタクルと切なさの余韻。
この二つがはまる人なら好きかも。
ただ、上記2作品に比べると、謎解きの展開があっけないし、ほぼ勢いで強引だし、それまでひたすら驚かせるだけなので、ドラマ性がずいぶん薄まってしまった感じ。
フラグもちりばめられているけれど、ほんとにフラグで、筋に絡んでこない。
あの少女、クロエ・グレース・モレッツさんだったのね。どこかで見た方と思ったら。この子が幽霊かと思っちゃったよ。
「魔女」の絡みも、ああそういうことかと納得するか、肩透かし感に襲われるか。
火が燃えている幻覚って、目が見えなかった方はどうとらえられるんだろうか。「お日様は温かさでわかる」というなら、燃え上がる火は、熱風と暑さ・音で、それと知るのではないのか?”見える”だけのものなら、ホログラムと同じで、私なら「あのきれいなの何?」とかやってしまいそうだ。と、「5歳から失明していて、見えていたときの記憶がない」にしては、違和感も感じる。だって「表情から感情を読み取る訓練が必要」なレベルなのに。”視覚情報で判断することに慣れている私たち”=映画鑑賞者にとっては、驚かせポイントたくさんあったけれど、”怖さ”を感じるポイントは、皆同じってことか。
皆が見ている自分と、私が見ている自分のアイディアは面白い。でも、演出上、整合性とれていなくない?
再考を願いたい箇所はたくさんある。
その分、シンプルではある。
と、文句をつけているが、目が不自由な方の、”視覚”を持つことの戸惑いとかは秀逸。実際にそういう経験を持つ人が何というかはわからないが。私も視力がどんどん悪くなっていて、あの、見え方には共感。だからこそ、幻覚が混じることの混乱・怖さも身に染みた。
あと、使用人を使い慣れているセレブな生活も覗き見られた感じ。
U.S.A.って、家人がいない間にTVを設置していくのね。へたに立ち会って、”強盗”されるより、いない間に盗まれる方がいいってことなのだろうか?
オリジナル未鑑賞。「怖い」と聞くからちょっとお預け。