「はっ? 何なんだ? と思う映画」実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち) とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0はっ? 何なんだ? と思う映画

2020年5月8日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

怖い

知的

けれども、そこに価値があるように思う。

古くは桜田門外の変・2.26事件、最近(?)の日本ではオーム真理教、イスラム国に走る人々に象徴される青年の暴走。そして、この事件。
 なんで? どうして?

最初の、安保に反対するところまでは理解できるけれど…

1970年代に大学に行けるのに、自分をプロレタリアートに規定すること自体がすでに矛盾…。
(1980年代には大学がレジャーランド化しているから、このころ大学に行けるのは金持ちだけってわけではないが、それでも金銭的理由から、奨学金を使っても進学できない人はたくさんいた)

”山”に入ってからの森と永田の行動は、自分の権力に固執する姿にしか見えなかったな。
何をどう正当化しようと、結局は自分の欲望に振り回され、暴力が幅を利かせていく…パワハラの過程にも似て、興味深かった。

”山”を下りてしまえばいいのに。
 傍から見れば、単純なことなのに、そうしないではまっていく彼ら。
 森が一度離脱して戻ってきたのはなぜだろう?単に思想的なものには見えない。
 世間には居場所がない彼ら。
 映画の中では幹部には見えないが、幹部としての、高邁な思想に命を懸けているという(傍から見ればどうでもいい)プライド。
映画の中でははっきりとは語られない。ただ、鑑賞者が想像するのみ。

「本当の勇気」っていう言葉が出るけれど、その後の行動をみると、その言葉すら、観念化していて、頭で考えているだけなのね、とがっかりする。
 今の言葉でいうと「意識高い系」で実態は空っぽ。インスタ映えに酔っているのと同じ。
 世間では認められないけれど、世間を騒がせるような・他の人がためらうような大きなことをやって自分の存在を認めさせようと意気がってつるむ…昔の暴走族の発想にしか見えない。
 世界の明暗は自分が握っている?…中二病の発想?けれど、彼らは現実的な方法をとれない。

「自己批判せよ!」
 『さらば、わが愛 覇王別姫』でも出てきたな。表面的にしか関わりのない他人に、その人の人生をとやかく言う権利なんかない。

いじめ・DV・パワハラの構造。
集団圧力。同調圧力。
最近映画化もされた、(倫理が規定されていない昔に行われた)USAの幾つかの心理実験。
電気とネズミを使った学習性無力感の実験。
視野狭窄。
 ”山”での状況を説明する理論はいくつかあるけれど…。

映画としては、ドラマチックな展開は、遠山の最後の言葉や、予告で流れる叫びだけで、当時の出来事・映像を交えて、淡々と描く。
 原田氏のナレーションは、明瞭で落ち着いていて耳になじみやすく、映画に入っていくのを助けてくれる。
 だが、グループが分裂・統合する様が複雑で展開が早く(それぞれの主張が何がどう違うのか理解が追い付かない:だから何?と興味を失っているのでなおさら理解できない・女子中学生の対人関係みたい)、頭が混乱してくる頃、”山”の場面になる。
 リンチがエスカレートしていく様が迫真で、本気で森と永田をぶちのめしてやりたくなると同時に、その論理の幼稚さに唖然とし、このエスカレートに歯止めがかからぬ理由をあれこれ探り出す。ーそういえば、この映画、R指定されていない。映像的にグロいのではなくて、いびり方が陰湿・狂気。
 そして、あさま山荘の場面、その後の顛末がテロップで流れ、エンド。
 井浦氏、奥貫さん、佐野氏他出演。永田を演じられた並木さんがすごい。

映画としての完成度は高い。
が、そこに映し出されているものを全力で否定したくなる。
だからこそ、現代に、日常に生きる私たちとして、「本当の勇気」って何なのかを考える一つのきっかけにはなると思う。

<余談>
 学生運動を懐かしがっている人たちって、熱中して取り組めた自分やその”お祭り”的な雰囲気を愛おしんでいるだけ?自分のことしか見えていない?(高齢者による自動車事故って、この世代)
 「自己批判」とかいうけれど、相手への批判ばかりだよね。そして社会のせい。自分では責任を取らない。
 その後、この世代の人たちがバブルを謳歌したことを思えば、猶更、学生運動って何だったんだろう。
 土地ころがし等他人を食い物にし、他人を押しのけての饗宴。
 未来の子どもたちへの”国債”という借金。
 格差・下流とかの言葉。
 これら今の現状と学生運動って、どうつながっているのか?
 学生運動の理念は理念。社会の中での自分の地位を確保するための競争は競争なんだろうか?映画に出てきた要求も、自分たちの利得要求ばかりだったな。
 常に右肩上がりの上昇志向=天井知らずに欲しがるだけ、むさぼり食らい尽くす。餓鬼。
 それこそ、学生運動にはまった人たちに「総括」「自己批判」してほしい。

 他の人へのおもいやりを示せない革命なんて、結局、自己中人間の自己満。
 そうやって、自分たちは好き放題やって、若者の将来の芽をつぶして、若者批判って、この映画に登場した面々と何が違うのだろう?

もし、現代的な革命があるとしたら、今の子ども・若者に何を遺せるかを考えることから始まるんだろうと、この映画を見ながら思った。

とみいじょん
talismanさんのコメント
2020年6月9日

とみいじょんさん、コメントありがとうございます!ご紹介頂いた2本、ぜひ見たいと思います。

talisman
talismanさんのコメント
2020年6月8日

同感するレビューです!あの頃、男もまして女が大学に行けたってすごいことなんですよね、と言うと黙ってしまう世代です。だから「余談」の内容、私も同意見です。

talisman