劇場公開日 2023年8月25日

シークレット・サンシャインのレビュー・感想・評価

全22件中、21~22件目を表示

5.0映画館で観たら、自分は一体どうなっていただろう

2010年1月18日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

怖い

ずっと映画館で
上映されていたときから気になっていました。

ただ自分でも
その辺りの深層心理がわからないのですが、
映画館に足を運ぶのを躊躇っている自分がいました。

ストーリーも知らず、
ここでの評価も高かったのに。

ひとつだけハッキリ記憶に残っているのは
リーフレットに映し出された主人公の女優さんの
表情に近寄りがたい、いや近づいてはいけないオーラを感じたこと。

満を持して、というわけではありませんが、
覚悟を決め、DVDを手にとったのでした。

☆彡     ☆彡

重いですね
さすがカンヌ国際映画祭女優賞を獲っただけありますね
あのソン・ガンホが霞んでみえましたから

映画館で観るべきだった
映画館で観なくてよかった

両方の思いが交差しています。

映画館で観ていれば
もっと自信を持って星5個をつけます。

でも、映画館で観ていれば、
すぐに席を立つだけの力を
両脚に行き届かせた自信がありません。

家で観ただけなのに
気がおかしくなりそうですから
映画館で観ていたとしたら、一体どうなっていたことか。

わけもわからず、前の席をバンバン叩いたり、
なんの関係もない、赤の他人を睨みつけたり、
おそらくまわりに迷惑をかけてしまったような気がします。

『チェイサー』鑑賞直後のお手洗いで
まったく見ず知らずの男性を睨みつけ怯えさせてしまったように。

作中のシチュエーションではありませんが、
これほどまでに映画館から自分に今作を遠ざけたのは
なんらかのメッセージが込められていたのだと思います。

◇   ◇

なにをキッカケに
イ・チャンドン監督は今作を着想したのでしょうか。

作品タイトル
音楽の使いかた
ストーリー展開
オープニングとエンディング

こんな月並みな言葉で
大変申し訳ないのですが、
パーフェクト、完璧でした。

音に関していうと
ある出来事が起きているとき。

音楽流していないんですよ。
音楽流して観客の気持ちを動かすような場面なのに。
セリフだけで行ききっちゃうんですよ。その場面で
「この映画、エライ作品だぞ。やばいぞ、これは」とアラームが鳴りました。

もう、そこから先は・・・。
もう、ことばになりません。

☆彡     ☆彡

“嘘”
“赦し”
“偽善”
“青い鳥は心の中にいる”

主人公の彼女は
最後に気づいたのでしょうか。

あなたははやくからゆるされていたことに

コメントする (0件)
共感した! 1件)
septaka

4.5宗教って、神様って、平等って、赦しって。

2008年7月17日

泣ける

悲しい

幸せ

 イ・チャンドン監督の作品は強烈だったオアシスしか観たことないが、
 オアシス同様にグヮン、グヮンと揺さぶられた。

 事故で夫を亡くしたシネ(チョン・ドヨン)は夫の故郷で再出発するために、
 息子ジュン(ソン・ジョンヨブ)と
 ソウルからミリャン(密陽)へ引越しをする途中に、
 車が故障してしまいレッカー車を呼ぼうとしていると、
 自動車修理工場を営んでいるジョン・チャン(ソン・ガンホ)がやってくる。
 彼は親切にしてくれ、街についてからも世話をやいてくれ、
 ピアノ教室も開き、順調そうな生活を送っていたが、ある時息子が・・・。

 息子が、シネが車から降りるシーン。
 息子が父親のイビキを真似し、そんな息子を真似するシネ、などなど、
 つまんない作品だと終盤になると覚えてないことも多いような僕が、
 序盤の印象的でもないようなシーンが物語が進むと、
 無駄のなかったシーンの連続だったということが分かり、蘇ってきて、
 残酷に人間の本質を描いているようで、それでいて美しく、
 恐さすら感じてしまう。

 絶望の淵に立ち、壊れてしまうシネ。
 何も出来ずに傍にいるジョン・チャン。

 序盤から自分を作っている様な主人公のシネも、
 優しくしてくれるジョン・チャンをはじめとしたミリャンの人々も、
 少しずつ何か気持ち悪いというか、観てて居心地が悪い。
 普通なようで気持ち悪いようで、どこか変な感じを漂わせている。
 それは何かあると思って観ているからか、
 現代の居心地の悪さか、シネの居心地の悪さが出ているのか。

 中盤で宗教に救いを求め表情が変わっていくシネにも、
 そんなことじゃないんだろうなと、何を描こうとしているのか、
 イ・チャンドン監督の作品を知っていると、身構えつつ観ていると、
 あるきっかけでまた壊れていく。

 はじめは薦められた宗教の勧誘をこばんだシネが神を信じ、愛し、
 癒されていく先にあるものは、赦そうとする気持ち。

 しかし、発せられた言葉に、絶望感を味わい、また壊れていく。

 赦すとはどういうことなのか、シネは神ではない。神は平等なのである。

 空を睨んでシネは神を罵倒し、もがき苦しみ、光を求める。
 そして、冒頭では空を見つめていたカメラも、
 その空から降り注ぐ光を追い求めていたように、ラストで着地する。

 何を信じて、何に救いを求めればいいのか、
 矛盾を感じた時どうすればいいのか。
 おかしいと思ってしまう赦しを提示し、
 複雑になりすぎているような世の中で、何をあなたは信じますかと、
 監督に問われているようである。

 最初は下心から優しくし、近づいたかもしれないジョン・チャンが、
 シネに特にこれということもなく寄り添っている姿は、
 存在感を消し去ったように演じるソン・ガンホがただ傍にいることが、
 平凡の男でもいてくれているだけで、救われているように感じる。
 あなたの幸福とはこんなことではないですかと、優しさを感じさせ、
 ぐるりのこと のリリー・フランキーも想起させるようで、
 誰かに寄り添い、寄り添って貰いたいと思い、
 時代が求めているのはこんな男なのかもしれないと思う。
 ぐるりのこと のラストのセリフを思い出す。

 デリケートな内容で、人間の残酷さだけでなく、
 やさしい温かさを描くイ・チャンドン監督の思いをしっかりと受け止めて、
 全身で喜怒哀楽を表現し、カンヌ国際映画祭で主演女優賞を獲得したという
 チャン・ドヨンの素晴らしい演技に圧倒され、
 抑えた演技で見守ってくれるソン・ガンホに惚れる。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
いきいき