ラフマニノフ ある愛の調べのレビュー・感想・評価
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生誕150年だから見てみた。
ピアノコンチェルトNo.2の前にロシア大使館員を興行主が追い出す行為があるが、完全にヘイト行為である。
『パガニーニの主題による狂詩曲』
(この曲だけ晩年)
『ピアノ協奏曲No2』
『ピアノ協奏曲No3』
『交響曲No2』
の四作品だと思う。
革命と戦争に翻弄された人生だったのだろう。
しかし、マーラー、プロコフィエフ、シェスタコヴィッチと続く流れからは少しばかり外れ、寧ろ、チャイコフスキーからの影響を大きくうけた古い作曲家として位置付くだろう。
やはり、アメリカでの演奏旅行を作曲家としての資質に重ねて貰いたかった。その他の曲にも沢山良い曲はあろうが、アメリカのJAZZは彼に影響を及ぼしていないと僕は感じる。
同じ様な境遇でもプロコフィエフやシェスタコヴィッチはロシアに残った。弾圧を受けながらも彼らは名曲を残している。勿論、ラフマニノフのほうが甘くてキャッチーな曲は多いと思うが、パターンが凄く似ている気がする。勿論、僕の所見である。
シェスタコヴィッチのセカンドワルツを聞くとあのバリバリのソ連作曲家でもこんな曲作れるんだと感じた。やはり、芸術家はどこにアイデンティティがあるかで決まるのかもしれない。ラフマニノフにはアメリカが似合わなかったって事さ。
しかし、ソ連がロシアに変わって、自由になったようたが、高い壁が横たわっている。チャイコフスキーはウクライナやプロコフィエフはウクライナ系なんだけどね。
初見手はなかった。だいぶ前にDVDで見た記憶がある。
天才の脆さを描く芸術
総合:65点
ストーリー: 60
キャスト: 70
演出: 70
ビジュアル: 75
音楽: 80
孤独、怒り、絶望、不安、情熱。そのようなものが入り乱れて場面をかき乱し、美しい彼の音楽を奏でているときも過去を振り返るときも、常に緊張感が漂う。不幸な生い立ちもあって、彼には心休まるときが無い。何かに怯え、何かに怒り、何かに突っかかっていく。家庭環境と政治体制と音楽、そのようなものにいつも振り回され続ける、天才の脆い精神。映画を見るまで私は知らなかったが、交響曲第一番の失敗や精神をおかしくしたりというのは史実らしい。映画全体でどこまでが事実でどこまでが創作なのかわからないのだが、見ている側もまた心休まるときが無い。
物語は彼の経歴から恐らくあることないことを片っ端から詰め込んだというもので、神経質な彼の姿以外には一貫性はない。ひたすら苦悩している彼の姿が描かれ、そしてそれらを全て浄化してしまう「パガニーニの主題による狂詩曲」の登場。透明な旋律が長年の苦悩も何もかも洗い流していく。恐らくそれまでのことは全てこの場面のための伏線、そういう芸術的作品。
天才には、そんな権利はありません
映画「ラフマニノフ/ある愛の調べ」(パーベル・ルンギン監督)から。
ストーリーとは、関係ないのかもしれないが、
天才ピアニスト、セルゲイ・ラフマニノフは、
ある女学校で、教鞭をとることになる。(音楽の先生?)
生徒たちに「気楽に・・」と指導したところ、生徒の一人が声を発する。
「気楽にしていてはダメです。」と前置きをして、
「天才には、そんな権利はありません」と言い切るシーンが記憶に残る。
天才には「のんびり」とか「気楽に」という言葉が似合わない。
そんな気持ちが伝わってきた。
天才として、この世に生を受けたからには、一気に駆け抜けて下さい、
そんな心の叫びまで聞こえてきそうな台詞だった。
彼にとって、その台詞がどう影響したのか・・ちょっぴり気になる。
しかし、最後には「天才作曲家」としても成功を収めるのだから、
「天才には、そんな権利はありません」は、インパクトがあったなぁ。
ロシア映画とフランス映画は、どことなく似ている。
私の勘違いだろうか?
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