ヘブンズ・ドア : 映画評論・批評
2009年1月27日更新
2009年2月7日よりシネマライズ、シネカノン有楽町、新宿バルト9ほかにてロードショー
無国籍感が全編を貫く、緩やかで静かなロードムービー
ある種、ゲイ・テイストも感じられた野郎2人の主人公が、年の差ダブルスコアな男女に変更。まるで「レオン」のレオンとマチルダのような関係にも見えることから、本作とオリジナルのドイツ映画「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」は、別モノとして考えた方がいいかもしれない。
とはいえ、「残された時間をどう、生きるか」というテーマは変わらず。名ゼリフである「天国じゃ、みんな海の話をするんだ」も、長瀬智也の口から発せられる。設定だけ聞けばケータイ小説のようでもあるし、カッコだけの恥ずかしい日本映画に陥る可能性も高かっただろう。だが、その手前で踏みとどまることができたのは、全編に通じる無国籍感にある。その象徴といえるのが、冬の街並みを捉えた小松高志による撮影と、Plaidによるアンビエント・テクノ。これによって、アクション満載のバカ(騒ぎ)映画だったオリジナルに対し、緩やかで静かなロードムービーとして仕上がっている。それによって、ファンタジックなテイストも、より強調された。「春にして君を想う」など、90年代に多く見られたアート系作品の懐かしさも感じることができる。そして、やはり気になるのが、観る者の胸に迫るラストシーン。オリジナルのインパクトにはかなわないが、映像の美しさと主演2人が醸し出す一体感はタダモノではない。
(くれい響)