「タイトルがいいですね」さよなら。いつかわかること septakaさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルがいいですね
タイトルがイイですね。
原題の直訳どおりでしたら、
作品の与えるイメージや、
伝えたいコトが、変わってしまった気がします。
終わることのない
『中東vsアメリカ』の戦争が与えた悲劇。
悲劇なのに、イイと褒めるのも変ですが、
着想・設定に、関心をしました。
[兵士戦士=男性]
とのイメージが強いですし、多くの作品が
[戦争=男性]の設定で、話は進行していきます。
今作、兵士が戦死してしまうのが
最重要なファクターなのですが、
[兵士=子供の母親、主人公の妻=女性]です。
はじめての設定でしたので、
どのように物語が進んでいくのか、
もう最初の段階で関心が非常にかきたれられました。
小学校低学年、
小学校高学年、2人の娘を持つ父親。
母親は、出兵中で不在。みんな、
母親が無事、帰ってくるのを待っている。
長女が、イラク戦争のTVニュースを見ている。
それを見つけた父親が「見ないという約束だろ」と
叱る。当然、長女は母親が心配で見ているのだから、
それを理解してくれない父親にふてくされてしまう。
父親の複雑な本心を子供たちは、わかるはずもない。
本当は、子供たちのためにも、母でなく、自分が
出兵したかったこと。しかし、近視のため、除隊を
命じられてしまい、その願いは叶わなかったこと。
このシーン、かなり重要でした。
後半までに、何度か長女を叱るシーンが出てくるのですが、
父親との距離が、だんだんと近くなってくるのが、わかります。
それは、長女が、父親の愛情に気づくから。
実は、長女、不眠症でした。母がいない不安もあって、
眠れないんです。母性に、飢えていたのです。
父親、長女が、そんなことになっているなんて、
全く、気がついていませんでした。しかし、
一緒に旅行に行っているとき、次女は熟睡しているのに、
寝たふりをしているだけで、起きている長女の異変を
感じ取るのです。
2,3言、言葉を交わしたあと父は語りかけます。
「もし、また眠れないのなら、僕を起こせばいい。
また、一緒に話をしよう」と。安心した長女は、
眠りにつくのです。
こういった触れあいを、娘達と繰り返しながら、
お互いの距離が近づいていったのです。
すんなり行ったわけでもありません。
父親も、娘にどう接したらいいか、不安だったんです。
そんな時、父親は、自宅の留守番電話に電話をするんです。
留守番電話のメッセージ、
戦死した妻の声になっている。
まるで、生きている妻に相談するかのように
「今、娘と旅行しているんだ。キミが亡くなったことを
上手く伝えられなくて困っている。僕はどうすればいいんだい」と。
父親、長女の、様々な葛藤。
それの対比として、いつも無邪気で陽気な次女。
それがあったから、悲しい作品であるにも関わらず、
また、いつも母親が見守ってくれているような晴天に、
包まれていて、明るく温もりのある作品に仕上がっていた。
それが余計に悲しみを際立たせるのですが。。。
ラストシーンも、
前半のフリが、上手に生かされていて、
感動します。私は、落涙してしまいました。
「戦争」がなければ、このような悲劇は起きないわけで、
「戦争」があるからこそ成立する作品という事実が、
余計に、悔しくもあり、悲しいのですが、
「家族とは」について、深く感じ入る作品でした。
「お父さん、くさい」とか「あっち行って」とか
口もきいてくれない、なんて娘との接し方に、
悩まれている、お父様には、ど真ん中の作品だと思います。