アフタースクール : 映画評論・批評
2008年5月13日更新
2008年5月24日よりシネクイントほかにてロードショー
登場キャラも観客も一緒になって騙される不思議で痛快な作品
聞くところによると、最近の若い映画観客は、ストーリーを結末まで聞いて、見どころや笑いどころ、泣きどころまでチェックして映画館に出かけるという。ホントかね。そんな心得違いの観客に、予備知識なしにまっさらの気持で見る映画はこんなにも面白いとショックを与えるのが内田けんじの「アフタースクール」だ。
もっとも、彼の映画は予備知識を与えること自体が難しい。終わってみれば単純なのだが、見ている間はストーリーが実に複雑で、一言でこんな話と説明できない。最初のシーンを説明するためには最後のシーンまで待たねばならないからだ。今言えるのは、登場人物たちも自分の役回りを完璧に把握しているとは限らないこと。全てのシーンにあれ?と心に引っかかる不審な芽があるから見落とすな!ということ。それが最後の謎解きで一気にカタルシスに転ずるからだ。登場キャラも観客も一緒に内田監督に騙されてしまう不思議で痛快な作品。見終わってからその騙しのテクを確認するために、誰かと一緒に見ることをオススメしたい。
(森山京子)