「家族あるある」歩いても 歩いても parsifalさんの映画レビュー(感想・評価)
家族あるある
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是枝作品は、「海街Dairy」「ドライブマイカー」「海よりもまだ深く」「万引き家族」「真実」と来て、これが6作品目。後期の作品群への橋渡し的な作品かなって。町医者の父が跡継ぎとして期待していた長男が、海水浴の少年を助けようとして亡くなって、途中で医師になるのを断念した次男は、子持ちの女性と連れ立って、兄の命日の帰郷。長女夫婦とその二人の子どもと過ごした間を切り取った物語。
他のレビューで、様々な家族あるあるを書いておられたので、ここではその方々に譲るとして。昔と異なって、親の職業やら家を代々継いでいく必要性がない時代の親子関係あるあるかなって。それに現代的な事情も絡まるから、家族も複雑さを増す。
表面的には、皆、雰囲気を大事にして取り繕っているが、亡き長男への思いやら、出戻りの次男の妻に差別的であったり、今でも近所の患者さんを大切にしていたり、昔、父が浮気した時の歌謡曲をポロっとかけてみたりと、悪びれずにぽろぽろ出すのが、家族の人間関係らしい。
最後、連れ子が、「将来の夢は、実の父の調律師、今の父の少年の頃の夢の医師」と庭で呟いて、父の思いを受け継がれていくのかと思いきや、両親が、「次に来るのは正月か」に、次男夫婦は、「1年に1回で十分ね」とすれ違い。今の家族をそのままに切り取ったかのような物語。
喧嘩、嫌み、浮気、失業、喪失、隠居、老化、同居など様々なことをひっくるめて、家族ってこういうものだよって。不自然に美化せずに、そのまま描こうとしている。いろいろあるけれど、でも、家族の記憶やら思い出は引き継がれていくよって。黄色のチョウの逸話が効いていた。
石田さんちの家族みたいな映画かな。
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