ぐるりのこと。のレビュー・感想・評価
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ぐるり一束。
黒柳徹子さんがいうには、10年ってのは、一束になって
過去にふっ飛んでいくのだそうだ。それはつまり、歳を
とってだんだんと月日の間隔が短くなり、10年が一束に
なって忘れ去られることなのらしい。あー分かる分かる。
自分の周囲を「ぐるり。」と表現した監督の意図が伝わる。
今作の主人公夫婦にとっては波乱の10年間だっただろう。
結婚して、生まれてすぐの子供を亡くし、妻は鬱になる。
それまでなんとなく幸せにダラダラと生活してきた二人
の世界観が一気にまた変化してゆく。夫は妻を支える為
法廷画家の仕事に精を出すが、そこに過去の実際の事件
を加え当時の世相を反映させる。だかその事件が二人に
絡むわけではない。過去の10年を振り返る時の標となる
のは、当時のニュース映像や芸能人のゴシップだったり
するのが自然だからだろう。あぁあんなことがあったね。
その時自分たちはあぁだったよね。という夫婦ならでは
の人生の歩みが淡々と描かれる。子供を亡くすというこ
とがどれほど辛いか、心を砕くかも伝わるが、それより
壊れかけた相手をいかに支えていくか、結婚というもの
夫婦というものが背負う作業項を描いているような感じ。
劇的なことは夫婦の不幸と事件以外は何も起こらないし、
かといって説教臭くも説明深くもないので不安定な生活
がそのまま映画の状況となってこちら側に伝わってくる。
よくできた映画とは思えないいびつ感がアチコチに感じ
られるのだ。でもそんないびつ感で夫の優しさが際立つ。
毎日妻を観察し何も言わずただ支える。話を聞いてやる。
手をつないでやる。妻が悲しみから立ち直るまでずっと
傍にいる。別れない。責めない。諦めない。捨てない。
夫だって辛いだろう、苦しいだろうが、弱音を吐かない。
だって元気な時の妻はあんなに貴方を支えていたもんね。
あぁこれぞ夫婦。と思ったらとうとう自然に泣けてきた。
鼻水でベタベタになった妻を可愛いと思う夫で良かった。
しかし「カツ定食」があそこまで不味く思える映像も凄い…。
日常的な夫婦の物語。
とある夫婦が、幸せと哀しみと、そして次へとまた生きようとする、二人の優しい物語でした。ショウコの辛く長いトンネルが、ようやくカネオと、ちゃんと向き合った時の、二人の会話が好きです。なんか、わかるなあって思えて。特に終盤の二人ようやくのんびり夫婦しているシーンの数々が好きです。自然体な感じがします。その合間に、次々と現れる90年代の事件の断片を見ながら、ふとなんとも言えない思いに駆られました。
生きるのも技術
「恋人たち」の前に予習を、と思いDVDを借りたのだけど素晴らしかった。
演出ってどこまでが演出なのか分からないけど、家族の会話とか距離感がとてもリアルでラスト近くのショウコの涙に「辛い事もあったよな、乗り越えて来たんだよな」とまるで一緒に10年を過ごしたかのような親近感が湧いた。
夫婦って幸せなら超ラッキーで辛い事を共に乗り越える覚悟を持って結婚しなきゃならないし、何年もかけて夫婦、家族って完成していく物だと監督の家族観にとても共感出来た。
ちゃらんぽらんな旦那が、共に過ごした時間や流産を経験してどんどん旦那として責任感を持って、言葉にはしないけどちゃんと妻を見てて、支えて家族になって行く様に、初めこそダメなヤツだと思ってたけど最後は理想的だなぁと思った。
前半の上手くいかないどんどんダメになって行くどうしようもない溜め息しかない展開が、後半の幸せへと向かって行く伏線になってて、この夫婦がどうか上手く行ってくれ!と願いながら観た。そして、ラストカットに幸せをお裾分けしてもらった。
生死を扱う重い裁判は、頑張らなくていい生きてるだけで良いんだ。生から逃げるなよ。ってメッセージを受け取ったのだけど、そんな単純じゃないか…
とにかく俳優さんの演技もストーリー、脚本も素晴らしかった。
二人のいちゃいちゃが素敵
平凡な夫婦に起こった第一子の死という悲劇。妻はだんだん鬱になっていく。法廷画家のカナオは様々な事件を傍聴し、時代の変化の中で夫婦は壊れそうであってもそうでなく絆を深めていく。木村多江さんリリーフランキーの演技は最高でした。
人それぞれ
ある夫婦の挫折と再生を、本当にあった事件裁判の様子も織り込みながら10年かけて追った作品。
淡々とした話の運びが、人生の流れそのものを表しているようで、どこがどう間違ったのか分からない苦悩の時もありながら、復活していく夫婦の様は、観ているものに元気を与える。特に、子を失くして精神的に本当に辛かった時、誰かが傍に居てくれて、そしてそれがまた、一般的にはふらーっとした型に嵌らない人だったというところが、人生、思い通りにいかないのが普通で、それでいいのだ、と思わせてくれた。
辛い経験をした人が強いんだなぁと、この映画を観ていると感じる。
そして、絵を描けるっていいもんだなぁとも思う。
なかなかいい映画だった。
ただのやりとりが長すぎる。
テーマがあいまいでちょこちょこ入る印象的な場面の意図がよくわからない。
この夫って確かにいいかげんだけど、最初から最後までいい夫に見えるので妻があんなに独りで葛藤する理由がよくわからない。理由がないからただ話すだけで解決するし。
あと美術やってるからって利害関係に頓着しないわけじゃない。
どんな時でも逃げない優しさ
どこにでもいそうな夫婦の10年間の日常生活をリアルに描いている。
妻は出版社の編集者、夫は法廷画家をやりながら絵画教室で教えている。
法廷では異様で異常な修羅場のシーンが描かれる。
妻は出産するが直ぐに子供を亡くす。それ以来妻の心は次第に壊れて行く。
妻は自信をなくして仕事も辞める。坂道を転がるように深く傷ついた心は泥沼に沈んでいく。
しかし、そんな妻を普段は女たらしでだらしのない夫ではあるのだけれど、彼は修羅場から逃げずに大きくて深い愛の心で受け止めるのである。
妻は夫の愛に支えられて絶望の淵から這い上がって再生して行く……
時として人は日常に潜む狂気と冷酷さと危うさに失意したり絶望するけれど、それでも人はさり気ない愛や優しさに希望を見出して行く。
ぐるりのこととは、良くも悪くもどうしようもない人、人、人…のことである。
リリー・フランキーの物憂くて飄々としている雰囲気の中に男の孤独とさり気ない優しさが垣間見えるのがいい。
木村多江も女とはこういうものだという演技をしてくれるいい女優さんである。
主役の二人の他にも柄本明初めいい配役陣を揃えている。
観て後味のいい映画だった。
たぶん人によっては名作
"夫婦愛"をテーマにした作品としては良作なんだと思うし、好きな人も多いと思うけど、描き方が苦手で、個人的にはイマイチ好きになれないかも。たぶん人によっては名作になると思う。
ラストで心が晴れた。
リアルな夫婦の日常が描かれていて
最初、キャストを見た時は木村多江とリリーさん?合わないんじゃないかな?と思いましたが、
なんともぴったり。
泣きじゃくる木村多江さんを慰めるシーンが
とってもとっても素敵でした。
それとは別に加瀬亮と新井浩文演じる死刑囚役がやけにリアルで気持ちが悪くなる程で
演技力に驚きました。
人 人 人
まるでリアルな日常が、淡々と描かれていくなか、主人公の職業柄、平凡な幸せから逸脱してしまった人たちの人生が交錯して、深く、こころに残る映画だった。
日々を、淡々と向き合って過ごしていきたいとおもった。
よき時代の最後の夫婦?
いろいろ考えさせられる映画でした。
内容はすごく現実的で、リリーさんの演技がうまく、夫婦のやりとりが面白かった。
でも、今現在、こういう感じのカップルって多いのかな?
昔はいっぱいいたんだろうけど、今だったら、籍は入れない、子供は作らないということになりそうな気がする。
昔は皆同じような環境で、貧乏で兄弟姉妹が多く、お金がなかったり、不自由な思いをしても、ある程度耐えられると思うし、兄弟姉妹が多いから、親の期待もそれほどでもなく、経済も右肩上がりで、愛があればお金なくても、結婚やその後の生活もなんとかなったと思うけど、今はどうなのかな?
個人的な印象としては、今はすべてのシーンで、自分を棚に上げ、相手に対する過剰な期待ばかりで、空回りしたあげく、結局、すべて崩壊する時代のような気がする。
この映画の時代設定は、ちょうどバブル崩壊の後ぐらいで、主役の夫婦はそんなに若いというわけでもなく、お金もありそうもないところを見ると、昔のよかった時代の最後のあたりの夫婦に焦点を当てることで、現在の状況を考えさせたかったのかな?と思いました。
また、ストーリーには直接関係ないんだけど、時代の雰囲気を出すためか、笑いをとるためか、その当時の重大事件を思わせる裁判シーンが入っていて、被告人がいろいろ発言しますが、それも面白かった。
「世の中の人全員に謝罪してもらいたい、もっと殺せばよかった。」という気の狂った人の発言としか思えないようなセリフの意味が、なんとなくわかるような気がするのは、私だけなのかな?
関係ないけど、埼玉地裁で撮っているシーンが、微妙に面白かった。
「あれからどうしてた?」
「夫婦の10年」。文字にすればたったこれだけ。だが、これだけの言葉の中に、夫婦の想いがどれだけ詰まっているだろうか?
橋口監督はありふれた日常の中のちょっとした非日常の混ぜ方が本当に巧い。本作の夫婦もごくごくありふれた夫婦だ。しかし法廷画家の夫は、裁判で極悪事件の中にある壮絶な悪意を垣間見、子供を亡くした妻は鬱病を患う。タイトルのぐるりとは周辺という意味。夫婦のぐるりには様々な問題を抱えている人々がいる。通常なら映画的要素であるドラマティックなシーンを、潔くバッサリとカットする監督の手腕に舌を巻いた。夫婦の間に起こる劇的な部分ではなく、その後の淡々とした日常を描くことで、観ている我々とこの夫婦が、まるで久しぶりに会う友人か何かのようになる。「久しぶり、あれからどうしてた?」と問うと、「あれからこんなことがあって大変だったんだぁ、今はまあ、落ち着いているけどね。」という会話が成立しそうな感じ。ここに、この夫婦と観客の“距離感”が生まれる。煩わしくもなく、よそよそしくならない程度の“つかず離れずの距離感”。この距離感が本作をゆったりとした心地よいものとしている。我々も夫婦のぐるりの人々なのだ。
この“つかず離れずの距離感”はそのままこの夫婦の距離感でもある。几帳面な妻とちょっとだらしない夫。デキ婚で結婚式も挙げていない2人は、決して情熱的な愛で結ばれてはいない。しかし、徐々に神経を病んでいく妻を、そっと見守る夫。ついに感情を爆発させる妻に対する夫のスカし方が絶妙だ。深刻な場面でおちゃらけてしまうのは夫の優しさ。だから妻も安心して子供のように泣きじゃくる。このシーンの木村とフランキーの演技がとても良い。アドリブのような気張らない自然さが何とも温かい。
10年――――、この間に社会ではバブル崩壊や様々な凶悪犯罪が起こっている。しかしこの夫婦はそんなぐるりに振り回されることなく少しずつベストな“距離感”を見つけ出した。つかず離れず。それは手を繋いでいながら足では蹴っ飛ばし合うような甘すぎない関係。ありふれた夫婦のありふれた関係だが、ここに辿り着くまでの2人の心の変化(成長)は、2人にしか解らないこと。
「あれからどうしてた?」今この夫婦にこう問えば、「うん、まあ、それなりに幸せだよ。」と少し照れながら答えてくれるに違いない・・・。妻の描いた花の絵のように、穏やかで優しい時間がこの先10年、20年と流れて行くに違いない。
ぐるりって一巡ってこと?
なんというか・・・
なんでもないようなグータラ亭主と元気なよめさんのお話が
いつのまにか、よめさんが弱ってしまって、グータラが支えていたりして
夫婦の暖かいお話ですが、どうでしょうか、万人受けはしないんじゃないかな
途中ちょっと時系列が順で進んでいるのかどうかわからなくなりました
ちょっと分かりにくいかもしれない
これは意識してやっているようなんですけど
もう一度コメント入りで観ると2度おいしくなります
強い絆で結ばれた夫婦
すごく強い絆で結ばれた夫婦の姿に涙がこぼれた。リリー・フランキーは、飄々としながらも絶対にそこにいてくれる安心感があってとても素敵だった。
「一度観てください」これしか表現方法が浮かばない
物凄く期待をして行き、
その物凄い期待を、
はるかに凌駕してしまった
滅多にない経験を味あわせてもらった作品。
それだけ圧倒されてしまったので、
このレビューを書き始めるのに、
時間がかかってしまいましたし、
書きながらも、どう表現すればいいか、わからない。
「鬱」「数々の犯罪」
拡散してしまいそうな内容を
よく、ここまで、飽きさせないように
上手く、まとめるよな、って位しか言えない。
BGMも、ほとんどなしで、行ききっちゃいましたし。
作品に対する感想、考察も、
見るたびに、自分自身の、当日のコンディションに
よって、変わってしまうのは明白だから、書きようがない。
もう、なんて言うのでしょうか。
月並みな、表現では、まとめきれない。
『一度、見てください』としか言いようがない。
まさに「ないない尽くし」なんです。
家に帰ってきたとき、心がグッタリしてしまいました。。。
ぐるりと十年 まわり道
DVDを借りてまた観た。夏だからというのもある。木村多江の 暑そうながら心地良さげな夏のシーンが 印象的だし。
08年邦画の話題をさらった 法廷画家の夫と鬱病の妻の十年の軌跡。
実体験で恐縮だが昔 親友が鬱病になった。堂々巡りの自己否定を繰り返し 時にはこちらに矛先が向く。励ましは禁句だから かける言葉が見つからず 私もへとへと。
そんな彼女が結婚を決めた時 内心危ぶんだ。紹介された彼の第一印象は『大丈夫か この人』…へらへらしちゃって彼女を支えられるの?
去年この映画に出会い 驚いた。親友の夫は リリーフランキー演じるカナオっぽい。
鬱病のみならず 夫婦の間に本音のやりとりは基本だ。でも 心をうまく言葉にできないなら どうしたら良いのだろう。
絵を描く。放置された米を黙ってとぐ。涙をぬぐい鼻をかませてやる。世界の中心で愛を叫ばないし 難しい専門用語もない。動物同士の毛繕いにも似た その触れ合い。
十年の回り道を経て日本は不穏に 映画の夫婦は静かな暮らしに戻る。しかし どこかが確かに変わったのだ。相変わらず平凡でお金もないけれど たぶん良い方に。
私の親友は今や元気いっぱい。先日 一家ぐるみで遊んだ。そういえば彼ら夫婦も もうすぐ結婚十周年じゃなかったかな。
『ぐるり』を再び観たくなったのは 十年前の自分の節穴な目のことを 密かに二人に謝りたかったからかもしれない。
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