劇場公開日 2008年6月7日

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「人との関わりが人を変えるんだな。」ぐるりのこと。 とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0人との関わりが人を変えるんだな。

2019年3月5日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

最初実態のないクラゲのような夫のラストの顔。なんて自信に満ち溢れ輝いているんだろう。
その性格から、自分を、他人を追いつめがちだった妻の顔もなんて優しくゆるやかになっていく。
夫は、法廷画家として様々な事件・同じ法廷画家・記者に囲まれ、否が応でも”人間”と関わっていく。依頼されても描けない事件もある。感じていないように見えても、心の奥底では激しく動くもの。

この夫婦、兄夫婦、母とのよくある日常を描きながら、
法廷画家として関わる事件の裁判所での人間スケッチを織り交ぜながら描いていく。
ラストの場面で夫が呟く「人人ひと」そしてエンディングは花模様。静かだけど力に溢れたエンディングに心に光が射してくるような気がする。

役者が秀逸。夫婦・兄夫婦・母、記者・法廷画家は勿論のこと、
裁判に現れる被告者・証人・傍聴席の皆皆も、本当に短時間で、こちらがさもありなんという人物像を演じきる。ふだん私達が報道で知りえた情報から描くイメージを、また違った角度(指だったり、足首だったり、手首だったり)から切り取るそのすごさ。
さりげないエピソードばかりが続くのに、その場面場面の適切さ。
すごい映画があるものだ。

とみいじょん