光州5・18のレビュー・感想・評価
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【”俺たちは暴徒じゃない!”1980年に韓国・全羅道・光州市で起きた光州事件を正面から取り上げた作品。コミカルな冒頭から一気にシリアスになって行く流れが恐ろしくも哀しき作品。】
■1980年、光州市。両親を早くに亡くしたタクシー運転手の青年・ミヌ(キム・サンギョン)は、高校生の弟・ジヌ(イ・ジュンギ)の親代わりとなって懸命に面倒を見てきた。
そんなミヌは、ジヌと同じ教会に通う看護師・シネ(イ・ヨウォン)に想いを寄せていた。ある日、ミヌは、ジヌを交えた3人で映画を観にいくが、韓国軍空挺隊が民衆に暴力を加えている現場に遭遇してしまう。
◆感想
・今作を観ると、この10年後に公開され大ヒットした「タクシー運転手 約束は海を越えて」は、この作品に可なり影響を受けているのではないかな、と思ってしまった。
・この映画が公開されるまでは、軍部を掌握した全斗煥の指示による”光州事件”はタブー視されていたので、今作は大変に意義がある作品であると思う。
■そもそも、韓国軍空挺隊は上部からの指示とは言え、何故に民衆に実弾を発砲したのであろうかと思うが、個人的には韓国内での全羅道に対する歴史的な差別思想があるのではないか、と思っている。
実際にこの事件も、当初は全羅道出身の民主的政治家、金大中氏によるものとされ彼は死刑判決を受けている。(その後、無罪判決。そして、全羅道悲願の大統領になっている。だが、全羅道出身の大統領は、金大中氏だけである。)
・明らかに市民を標的にした韓国軍空挺隊の発砲シーンは実に恐ろしいし、ニュースで流れる”市民は全員無事です。”というアナウンスの中、対比的に描かれる銃弾に斃れていく一般市民たち。
・シネの元軍人である父を演じた韓国の名優であるアン・ソンギの存在は際立っている。市民軍の隊長として、死を覚悟しながら軍に対抗し、市民軍たちを鼓舞する言葉は、聞いていて涙が出そうになる。
<当然の如く、後年この事件や、つい最近公開された「ソウルの春」で描かれた12.12軍事反乱を起こした罪で、大統領になった全斗煥は死刑宣告を受け(その後、特赦)、死後も韓国大統領経験者としては、只一人国葬が行われなかった事も、当たり前だろうと思う。
日本の自衛隊は、近年の激甚化する気象災害の際に現地に出向いて、献身的に救助活動をしてくれている。
故に、私は憲法九条の改定には反対なのである。
相手国に銃を向ける軍隊は、場合によっては自国民に銃を向ける可能性があるのであるから。それは、第二次世界大戦の沖縄戦の歴史が物語っている。
故に私は、右傾化する日本の政治状況を、カントリージェントルマンの如く注視し、選挙には必ず投票し、民意を示す必要があると思っているのである。
韓国の光州事件を将来の日本で引き起こさないためにも・・。>
忘れてはいけない
一言で言えば重い。
観ている間、頭の中を「なぜ?」という疑問がぐるぐる回って離れませんでした。
市民と軍隊は対峙していても、
お互い家族がいて家に帰れば一般の平凡な幸せがある人だと認識しているというのに何故戦わなければならないのか?
この映画は同じ国内の武力弾圧です。
だからこそよりいっそう悲壮に感じます。
それでも市民が自分たちの誇りをもって立ち上がった歴史を忘れてはいけない。
しかし韓国には演技力のある俳優さんがいるなあ。
ヒロインが殺人を犯してしまったシーンにはこちらも身につまされてやるせなかった。
引き金の先に、あるもの
冒頭のゆる~い日常。DVDなら、巻き戻せますけど、現実には、もう二度と戻らない。あの掛け替えのない日常は、決して戻らない…。
恐ろしくウェットな仕上がりです。お客さーん、ここで泣いてーって、ADさんが舞台袖で、手を回しているのが見えるくらい、ハイパーウェットなテイスト。泣きじゃくる子供の前で、どうして兵隊さん、あんなことするかな。
例えば自分が、劇中の兵隊さんだとしましょう。構え、銃!、撃てぃ!。その先にあるものは…。皆様なら、何処を狙って発砲します?。
綺麗事では済まされない出来事。映画1本観ただけで、ヒトの性根が変わるわけもなく、映画1本観ただけで、洗脳状態になっても困るけど、ヒトの生死とは何か、正しさとは何か、正しさの為に、ヒトには何が許されるのか、ちょっと思い馳せるきっかけになる映画です。
実際の光州事件は、時の政府の報道管制の為、詳細は封印されているようです。外国人記者が伝えた報道で、知れ渡ることになります。(興味ある方は「タクシー運転手」チェックしてね。)本作が、どこまて史実に忠実なのか不明ですが、大義を振り回すヒト、それに従わざるを得ないヒト、理不尽な死と向き合うヒト。私達のひとりひとりが、この事件の1ピースだとすれば、皆様は、どのピースを選択します?。本作をご覧になった後に、御決断下さい。
驚くほど「君の涙ドナウに流れ」と、同じ展開です。でも演出が、驚くほど真逆。とにかく泣かせにきます。波状攻撃で泣かせます。そして、エンディングでとどめを刺されます。私の涙腺決壊ムービーです。
私達は、進化していますか?。
悲しいけど、これって…。
実話とは、、、
これが事実だったことがなんとも辛い。1980年、そんな昔の話ではないんだから。
なんの武器も持たない市民に対して銃を打ちまくるとは、、、何度も恐ろしい。途中で市民も武器を奪うが、訓練された軍人たちに敵うわけもなく。やりきれない想いになる映画でした。
一般市民が戦うことになる理由
光州事件を描いた映画といえば「タクシー運転手」が思い浮かぶが、これはそれより10年前にできた映画。
クーデターを起こした軍がその正当性をアピールするために民主化運動を弾圧しただけでなく、一般市民も暴行し死亡させていった。何もしていなくても大事な人が軍に殺されたらそりゃ市民は立ち上がる。
軍に歯向かうことに慎重だった人たちも最終的に総結集して、そして殺されていった。やはりというか、悲しい結末しか待っていなかった。
正直、前半の登場人物とその関係性説明のパートが意外と長くてダレてしまうし、後半もさぁ泣きなさいって感じの展開。それでも思いっきり泣かされてしまう。これって映画の作り以前にこの光州事件という史実の重みがなせる技だと思う。劇場の周りでもかなりの人が泣いていた印象。
それにしても、本作でも主人公はタクシー運転手だった。何かの意味がある?それとも偶然?奇妙な共通点だった。
もはや映画の良し悪しではない、ということ
タクシー運転手約束は海を超えて、1987ある闘いの真実、ともに意欲的な作品。タクシー運転手は、未だにまだタブー感と謎を感じる光州事件をストレートにきちんとした映画で表現していた。そして、光州518は、この2作品よりずっと前、2007年に撮られている。なんかそれだけですごい。
光州事件を扱う映画は長くて興味のない人には冗長に思われるかもしれないが、それぞれの映画から異なる事実の断片をしることとなり、それぐらい、さまざまななことが起こり、市全体を揺るがしいろいろな人本当に多くの人が関与し犠牲になったのだとわかる。そもそも事件なんてネーミングが陳腐なくらいの大事変。この映画では、実戦に行くという上官に、北侵かと聞くが極秘と答えてもらえず軍の輸送機は南進し、まさかの同胞、韓国の市民に対する、前代未聞ありえない実戦、任務だった。光州事件は事件ではない、軍の司令で行われた狂気の沙汰。
まだまだエピソードはたくさんあり、本当はもっと長い作品にしたかったかもしれない。2007年にこのような作品を作った監督にも韓国の社会にも脱帽する気持ち。
追記: 深澤真紀さんのポリタスTV深澤ゼミで教えていただいた情報。原題は華麗なる休暇、軍のコードネームだそう
ウンコという絆で結ばれた戦友
当時の韓国の情勢など知る由もなかった1980年。隣国でこのような残虐な事件があったことに衝撃を受け、軍事政権に対する憤りのおかげで映画館の席を立つまで身体の震えが止まらなかったほどでした。徹底抗戦を繰り広げる光州市民の決断について、日本でこんな事態になったなら?等々、考えさせられることも多く、ずっと心に残りそうな映画。
両親を早くに亡くしたタクシー運転手ミヌ(キム・サンギョン)と高校生のジヌ(イ・ジュンギ)の兄弟。ミヌはジヌと同じ教会に通う看護師シネ(イ・ヨウォン)に恋していた。同僚インボン(パク・チョルミン)の後押しもあって、なんとか映画に誘い出すことに成功。弟も同伴でコメディ映画を観ていたら、催涙弾とともに傷ついた男が兵に追われて助けを求めて館内に・・・
1979年の朴正煕大統領暗殺によって訪れた束の間の民主化の兆し。平和に暮らす国民の前に立ちはだかったのは軍による学生デモの鎮圧であった。全斗換退陣、金大中釈放などのシュプレヒコールを行う学生たちに襲いかかる理不尽な力。デモとは関係のない一般市民にも軍隊による残虐行為が繰り返されるのだ。
韓国でもタブーとされてきた光州事件を暴くドキュメンタリー映画のような内容を想像していたけど、力のない小市民が極限状況においていかに抗戦するようになったかという心理状態や家族や恋人のみならず、同じ市民への愛も感じられるドラマでした。大学生の息子を殺された盲目の女性、父親を殺された幼子、同級生を殺された高校生たちやその教師。感情移入せずにはいられない・・・
シネに対する中学生並の純情な愛に微笑ましくなり、演ずるイ・ヨウォンが徐々にともさかりえに見えてきた。鼻と口元がとてもよく似ているんです。その父親は元軍人であり、市民軍の隊長となるアン・ソンギ。終盤にキム・サンギョンが彼に「アボジー」と泣き叫ぶシーンに涙がこぼれ、追い込まれた市民兵が「名前を忘れないでくれ」と次々に無線機に呼び掛けるところで大泣きでした。
軍事クーデターによる政権がいかにおぞましいものであるか、権力による情報操作がいかに世の混乱を拡大させるか、などとあれこれ考えてる中、末端の兵士だって同じ韓国人なんだと思うと、ますます悲しくなってくる。事件が拡大した原因には兵役義務があったり、国民性の違いがあるためと簡単に片づけてしまう嫌韓の方もあろうが、このような惨劇はどこの国においても起こる可能性があるものだ。軍隊(自衛隊だってそうだ)は決して国民を守るための組織ではないということを忘れてはならないと思う。
泣いてください、、の韓国映画
酷い事件ですね、こういうのを映画化するというだけまだ救いがあると思います。
この映画はかなりくどいです。終盤は泣け泣けオーラ満載で、「ちょっと・・・もう良いから」と疲れました。
最後の集合写真、あれは要るのかな。
辛口でスマン
「軍政と民主化の武力衝突×韓国映画=涙物」決まりきった構図。な~んて言ったら、韓国映画が好きな人に起こられるかもしれませんが、やっぱりそうなんだもん。イ・ヨウォンの演技が唯一の救い。泣き方が、映画向きじゃないっていうか、ちょっとヘンなんだけど、それが新鮮なの。例えば自分が本気で泣く時って、決してキレイじゃない。他人には見せられないような、そんな不細工な感じが表現されていて、上手い!って唸っちゃった。暑苦しい男性陣と比べると存在薄ってところが、かえってリアルだわ。
歴史に刻み込まれた悲劇をラブストーリーにまとめ上げた傑作
このような民族の歴史に刻み込まれた悲劇的事件を、時にユーモアを交えながらのラブストーリーにまとめ上げたところがすごい作品です。
戒厳軍のあまりの非人道的な振る舞いに、事件に飲み込まれていった二人が、引き裂かれていく様は、涙なくしては語れません。涙腺を直撃するラストは、やはり韓国映画の王道を表現しています。
邦画がこれをやるとすぐ政治色を出し、監督だけが怒っていて、観客は白けてしまいがちです。そして、民衆対権力という構図で、群像劇にしてしまい、誰に感情移入していいものか掴みにくい作品になっていたことでしょう。
この作品の成功は、なんといっても主要人物を絞り込んで、事件を背景に廻し、もっぱら主要人物でドラマを組み立てたことにありました。
枠を固めるキャラも個性的な面々で、戒厳軍が攻めてきて、命の危険があるなかでも、ギャグを連発しているのです。取り巻きの軽妙さが、この作品の重たさを和らげていました。
それにしても、ショッキングな映像でした。
同じ同胞同士が、無差別に女も子供も老人も、暴徒といたというだけで無差別に殺されていいものでしょうか。いくら上官の命令でも、撃ち殺す中には、自分の親類縁者もいたかも知れません。軍事政権の狂気を身にしみて感じずにはいられませんでした。しかも撃ち殺すシーンにおいて、一切妥協ないのです。ああっそこは撃たないで!関係ない人でしょと叫びたくなるようなところへも、構わず銃弾は飛び交い、次々に血しぶきを上げて人が倒れていきました。映画とはいえ、目を覆いたくなるような惨劇です。
父親が撃たれて倒れたところにしがみついてなきじゃくる幼子。その子を助けようとして犠牲になる市民たち。せめて救いなのは、幼子に銃弾が当たるシーンを免れたことでした。
医者も例外ではありませんでした。けが人の救出に出動した救急車まで、戒厳軍は狙い撃ちし、医者を殺したのです。
やがて主人公ミヌの機転で、戒厳軍は一時撤退を余儀なくされます。
ここで撤退理由として、市民側がTNT火薬を用いて戦車などの破壊予告をしたことになっていますが、実際は市民側が戒厳軍の戦車などの戦備や火器を奪い応戦したのです。製作予算の制約もあったでしょうが、実話通りの市街戦があったほうがより迫力があったでしょう。
いざ撤退となって、軍の前ではしゃぐ市民に飛んでもないことが起きました。撤退の刻限となり、国家が流されて、厳粛な表情で市民が奏上しているとき突如として、戒厳軍が無差別射撃を始めたのです。
この作品が韓国の国民を捉えた要因として、国家を神妙に歌っている愛国民を無差別に銃撃したこのシーンに特に強い衝撃を受けたからだと思います。
この銃撃で、ミヌは目の前で弟を殺されて逆上。恋人シネの父親フンスが組織した市民軍に参加します。
作品では、突如ラストに市民軍は孤立したような描かれ方をします。フンスが語るアメリカの空母が来たら自分たちは終わりだということも唐突でよく解りませんでした。
ここは史実通り、指導部が闘争派と協商派に分かれて分裂し、一部闘争派を残して自主武装解除を行ったこととアメリカが鎮圧を黙認したことを描くべきでした。
ただ物語は史実よりも、恋するミヌとシネにどのような運命が待ち受けていくにポイントがおかれています。
ふたりがやっと愛を確認しあったとき、どのような悲しみが待ち受けていたのか、映画館でハンカチを握りしめて、見届けてください。
そして人と人とが愛し合うことの深さと、命の重たさを感じずにはいられなくなることでしょう。
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