劇場公開日 2008年3月22日

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「愛の永遠を信じられなくなった心と、執着と孤独・迷子の行方。」マイ・ブルーベリー・ナイツ とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5愛の永遠を信じられなくなった心と、執着と孤独・迷子の行方。

2022年9月3日
PCから投稿

悲しい

怖い

幸せ

独特の色彩・映像感覚。カメラワーク。
 ブルーベリーの紺青色をベースにした、電飾のきらびやかさ。それと反比例するかのような人間模様。
 突き抜けた空。道路のみが映し出される場面。疾走感。
 映像に関しては、考えに考え抜かれたものだと職人芸に息を飲む。
そうか『ブエノスアイレス』の監督作品だったのか。

そして、その映像・物語を包む音楽。
ある物語は、心が張り裂けそうなほど切なく痛いのに、そんな想いまで、優しく包んでくれる。
他の物語も含めて、心地よい酔いに連れて行ってくれる。

旅に出たくなる。自分を見つめるための。

”失恋した主人公とカフェオーナーの…”という説明がされているけど、そういう部分もあるが、そうと説明しきれない映画。
 主人公の失恋の痛手、カフェ オーナーとの関係が、パイの皮のように土台としてありつつも、中のブルーベリーのような味わいをみせる3つの物語が展開する。
 『ブエノスアイレス』のように傷つけあう関係しかもてないアニーとス―・リン。
 人の心を読み切ることができて操れると自負していたが、肝心なところではずしてしまうレスリー。
 ”鍵”と”迷子”をめぐるカフェオーナーの恋。
 エリザベスが旅先からジェレミーに葉書を送るが、そのエピソードも特に発展はしない。
 主人公は狂言回しのような役割で物語は進む。

物語だけをみると他にもありそうな話。長々と説明しない。その出来ごとの寸景で語る。へたをすると鑑賞しているこちらが置いてきぼりになってしまうのだが、その僅かなエピソードの中で、一人ひとりの表情を本当に丁寧におっているので、その人物の心情を追体験してしまう。心が痛くなる。
 特にデイビット氏がすさまじい。その恋人を演じたレイチェルさんもすごい。

だからか、この映画でも人を求めるってどういうことなんだろうと胸を締め付けられる。
「他人を鏡にして自分をみる」ように。

入れ子のように挿入された物語は切なく、心がはりさかれて痛い。
 でも、ラストの、ス―・リンの、レスリーの、エリザベスとジェレミーの表情にほっとする。
 万人受けするアップルパイではないけれど、ここぞと言う時チョイスしたいブルーベリーパイのような映画。

☆   ☆   ☆

「Special thanks Louis Vuitton」と、エンドクレジットに出てくる。
ルイ・ヴィトンが全面協力したらしい。
 ブランドに疎い私は、ラストの方でエリザベスがもっているものしかわからなかったけど、様々な協力しているのだろう。

『旅するルイ・ヴィトン』展とのコラボの上映会で鑑賞。
映画鑑賞後、展示会も鑑賞。
 デパート等に並んでいるような権威づけのための”ブランド”品だけでなく、様々な品物が展示。悪条件の中で携帯物を守るために作成されたもの。レコードや楽器、帽子、茶道具など繊細なもののための鞄。こんなもののための鞄?と驚いてしまった品の数々。と、改めて世界に冠するそのブランド底力を鑑賞させていただきました。
 こういう鞄等があったから様々なロケ等ができたんだろうなと、この映画に限らず、すべての映画・文化の発展・流通に寄与されてきたことに関して、改めてルイヴィトンに感謝します。

とみいじょん